<配当金課税>

種類 期間 課税方法 源泉徴収
区分 所得税 住民税 配当控除 損益通算
(※5)
所得税 住民税
上場株式
(※1,6)
平成21年1月1日~平成25年12月31日 選択 申告不要
(※3)
7% 3%
申告分離
課税
7% 3% 不可 7% 3%
総合課税 5~40% 10% 不可 7% 3%
平成26年1月1日~ 選択 申告不要
(※3)
15% 5%
申告分離
課税
15% 5% 不可 15% 5%
総合課税 5~40% (※7) 10% 不可 15% 5%
種類 期間 課税方法 源泉徴収
区分 所得税 住民税 配当控除 損益通算
(※5)
所得税 住民税
未上場
株式(※2)
基準(※4)
以下
選択 申告不要 10% 不可 20%
総合課税 5~40%
(※7)
10% 不可 20%
基準超 総合課税 5~40%
(※7)
10% 不可 20%

※1 大口株主(配当等の支払の基準日において5%(平成23年10月1日以後に支払を受けるべき配当等については3%)以上有する株主)に対する上場株式の配当を除きます。
※2 大口株主(配当等の支払の基準日において5%(平成23年10月1日以後に支払を受けるべき配当等については3%)以上有する株主)に対する上場株式の配当を含みます。
※3 上限なし
※4 10万円×配当計算期間/12
※5 上場株式の譲渡損失との損益通算
※6 公募株式投資信託は上場株式と同様
ただし、特別分配金は非課税。また、終了または一部の解約により交付を受ける金銭は、平成
21年1月1日以降、株式の議渡所得に係る収入金額とみなされます。
※7 平成27年1月1日以降は5~45%

<相続税早見表>配偶者なし

(単位:千円)

課税価格 改正前 改正後
子供1人 子供2人 子供3人 子供1人 子供2人 子供3人
50,000 0 0 0 1,600 800 200
100,000 6,000 3,500 2,000 12,220 7,700 6,300
200,000 39,000 25,000 18,000 48,600 33,400 24,600
300,000 79,000 58,000 45,000 91,800 69,200 54,600
400,000 123,000 98,000 77,000 140,000 109,200 89,800
500,000 173,000 138,000 117,000 190,000 152,100 129,800
600,000 223,000 178,000 157,000 240,000 197,100 169,800
700,000 273,000 221,000 197,000 293,200 245,000 212,400
800,000 323,000 271,000 237,000 348,200 295,000 257,400
900,000 373,000 321,000 277,000 403,200 345,000 302,400
1,000,000 423,000 371,000 319,000 458,200 395,000 350,000
1,100,000 473,000 421,000 369,000 513,200 445,000 400,000
1,200,000 523,000 471,000 419,000 568,200 495,000 450,000
1,300,000 573,000 521,000 469,000 623,200 547,900 500,000
1,400,000 623,000 571,000 519,000 678,200 602,900 550,000
1,500,000 673,000 621,000 569,000 733,200 657,900 600,000
2,000,000 923,000 871,000 819,000 1,008,200 932,900 857,600

<相続税早見表>配偶者あり

(単位:千円)

課税価格 改正前 改正後
子供1人 子供2人 子供3人 子供1人 子供2人 子供3人
50,000 0 0 0 400 100 0
100,000 1,750 1,000 500 3,850 3,150 2,625
200,000 12,500 9,500 8,125 16,700 13,500 12,175
300,000 29,000 23,000 20,000 34,600 28,600 25,400
400,000 49,000 40,500 35,250 54,600 46,100 41,550
500,000 69,000 58,500 52,750 76,050 65,550 59,625
600,000 89,000 78,500 70,250 98,550 86,800 78,375
700,000 110,500 99,000 88,250 122,500 108,700 98,850
800,000 135,500 121,500 110,750 147,500 131,200 121,350
900,000 160,500 144,000 133,250 172,500 154,350 143,850
1,000,000 185,500 166,500 155,750 197,500 178,100 166,350
1,100,000 210,500 189,000 178,250 222,500 201,850 188,850
1,200,000 235,500 211,500 200,750 247,500 225,600 211,350
1,300,000 260,500 234,500 223,250 273,950 250,650 235,000
1,400,000 285,500 259,500 245,750 301,450 276,900 260,000
1,500,000 310,500 284,500 268,250 328,950 303,150 285,000
2,000,000 435,500 409,500 383,500 466,450 434,400 411,825

表の見方

(1)相続財産(生命保険金などのみなし相続財産も含みます)から、一定の非課税財産*と葬式費用、債務を差し引いたものが、表中の課税価格になります。
(*生命保険、退職金等に一定の非課税部分があります。3-93-10をご覧ください。)
(2)配偶者は子供の人数にかかわらず、財産の1/2を相続する前提で計算されています。
(3)表示された税額は相続税の総額です。

コラム6

社会医療法人

社会医療法人制度は、救急・災害・へき地医療等など特に地域で必要な医療の提供を担う医療法人を新たに社会医療法人として認定し、これらの医療に社会医療法人を積極的に参加させることにより、良質で、かっ適切な医療を効率的に手帰郷する体制の確保を図るために設けられました。平成24年1月1日現在では全国に161の社会医療法人があります。
医療法人が、都道府県知事の認定を受け、社会医療法人となるためには、4つの要件があります。
≪1≫医療法人の役員のうち親族が3分の1を越えないこと。
≪2≫救急医療、へき地医療などを行っていること。
≪3≫法人の理事と監事の選任の定数、選任方法などの運営が厚生労働省令で定める要件に該当すること、社会診療報酬と助産にかかる収入が全収入の8割を超えることなどの法人の事業が厚生労働省令で定める要件に該当すること。
≪4≫解散時の残余財産が国等に帰属することです。
社会医療法人の認定を受けますと、医療法人はいくつかの特徴を持つことになります。社会医療法人等が開設する病院等の業務に支障のない限り、定款等に定めるところにより、厚生労働大臣が定める「収益業務jを行うことが、きます。社会医療法人の社会的信用を傷つけないことといった要件はありますが、不動産業・飲食店・教育学習支援業といった収益業務を行う事がで、きます。また社会医療法人は、法人税法上、公益法人等とされ、税制上の優遇措置が受けられます。社会医療法人の行う本来業務に法人税は課税されません。院内の自動販売機の設置、売店の運営、患者を対象とした日用品の販売といった付随業務と収益業務にのみ法人税が課税されます。社会医療法人は法人税の納税義務はほとんど生じないでしょう。また、社会医療法人は医療法人債という社債を発行することができますので、投資家から直接必要となる資金を調達することができます。

6-3 税テク運用

税金を活用した資産運用について教えてください。

不動産や金融資産の運用を考える場合、表面的な利回りだけでなく、税引後の手取客員としての実質的な利回りを検討して、運用対象を選択することが重要です。

(1)金融資産運用と税金

大部分の金融商品は、源泉分離課税といって、他の所得とは分離して課税計算されるしくみになっています。所得税の分類上は、利子所得となり、税金は運用益の20%で済みます(所得税15%、住民税5%)。総合課税の場合、所得税・住民税の合計で最高50%(平成27年以降は55%)の税率となっていますから、収入が多く、所得税・住民税の税率の高い方の場合には源泉分離課税の方が有利になります。
ただし、この場合、借入金で投資しても、投下資金に対する借入金利息については、税務上全く考慮されません。
なお、主な金融商品の課税方式と利回りについては、「6-1」を参照してください。

(2)上場株式の譲渡と税金

上場株式の譲渡益に対する課税は申告分離課税によります。
申告分離課税とは、株式等の譲渡益(株式等にかかる譲渡所得等の金額といいます)を他の所得とは分離して単独の課税がされる方式です。(原則確定申告が必要です。)
なお、特定口座制度により、源泉徴収を選択することにより、確定申告をせずに課税関係を完結させることもできます。
≪1≫譲渡益に対する税率
譲渡益に対する税率は原則20%ですが、平成25年12月31日までは譲渡益に対して10%(所得税7%・住民税3%)の優遇税率が適用されます。
譲渡益とは、譲渡(売却)代金から購入金額と借入金利子、委託手数料、管理費等の経費を差し引いた金額です。
≪2≫譲渡損失の繰越控除
上場株式等を証券会社を通じて売却したことにより生じた損失金額のうち、その年に控除しきれない金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により株式等の譲渡所得の金額及び申告分離課税を選択した配当所得から繰越控除できます。

このように株式市場を活性化するため時限的措置として様々な優遇措置が定められましたが、取得価額の把握と売却のタイミングが重要となってきます。

6-2 不動産運用

不動産による運用益の取り扱いについて教えてください。

(1)不動産の賃貸による運用益は総合課税されます。
(2)不動産を賃貸することにより赤字が生じた場合には、他の所得との通算ができます。
(3)不動産の値上がりによる含み益については売却した場合に課税されます。

(1)不動産運用損益の取り扱い

個人の場合、不動産の賃貸による所得は不動産所得となり、本業所得とともに総合課税されることになります。したがって、本業所得が高額である場合には税負担が大きくなる場合があります。
また、不動産の賃貸による不動産所得が赤字の場合には、本業所得と通算して課税計算することにより、税額が圧縮される場合があります。ただし、不動産所得の赤字のうち、土地金利部分については、他の所得との通算が制限されますから、注意が必要です。
設例では、5年間の家賃収入2,500万円に対して、所得税等の節税額が、201万円、実収入が、1,527万円ということになります。
このように、所得税を圧縮しながら、賃貸不動産の運用ができます。

(2)不動産の売却損益の取扱い

個人が、賃貸用不動産を売却した場合の、売却益については、原則として他の所得と分離して税金が計算されます。
売却益については、その賃貸不動産の所有期間の長短により課税の方式が異なり、所有期間が5年を超えると、長期譲渡となり税額が軽減されています。

自己資金で賃貸アパートを建設した場合のタックスプラン

く前提条件〉
1.賃貸不動産購入価額:1億円(内土地価額4,000万円)
2.家賃収入:年500万円
3.資金調達:全額自己資金
4.建物の減価償却費 :本体(建物の80%/定額法22年償却)附属設備(建物の20%/定率法15年償却)
5.個人所得:3,000万円/年

(単位:万円)

初年度 2年目 3年目 4年目 5年目 5年間累計
<収入>
家賃収入 ①
500 500 500 500 500 2,500.0…A
<経費>
減価償却費
借入金利息
 
380.4
0
 
359.2
0
 
340.8
0
 
324.8
0
 
312.8
0
 
1,718.0
賃貸に係る
その他経費
454 180 180 180 180 1,174.0…C
経費計 ② 834.4 539.2 520.8 504.8 492.8 2,892.0
<所得>
不動産所得③
(①一②)
-334.4 39.2 -20.8 -4.8 7.2 -392
通算後所得
(3,000万円+③)
2,665.6 2,960.8 2.979.2 2,995.2 3,007.2 14,608.0
<税額>
当初所得(3,000万円)
の所得税
1,220.0 1,220.0 1,220.0 1,220.0 1,220.0 6,100.0
通算後所得の税額 1,053.2 1,200.8 1,210.0 1,218.0 1.224.0 5,906.0
節税額 166.8 19.2 10.0 2.0 -4.0 194.0…B

06-02

6-1 金融資産運用

金融資産運用についての考え方を教えてください。

(1)個人の場合の金融資産運用は、税引後資金の運用となります。
(2)金融資産運用益について、医業所得と総合課税されるか否かが重要です。

(1)金融資産運用は税引後資金により行われる

定期預金、投資信託等の金融資産運用については、個人事業主の場合には、家事費、家計費を運用していることになりますから、その運用のための借入金金利は事業上の必要経費にはなりません。
すなわち、税引後の資金により、運用益を得ることになります。この点が本業に資金投下して利益を得ることとの遠いです。
たとえば、本業に資金投下して10%の利益をあげる事業と、金融資産運用により10%あげる運用益とがあったとします。同じ利回りであっても、本業への資金投下については借入金利が必要経費となり、全体の課税所得を圧縮しているのに対して、金融資産運用の場合には、必要経費にならない場合もあるということです。

(2)総合課税と源泉分離課税

運用益についても、大部分の金融資産運用益が、本業所得とは分離して課税計算されるしくみになっています。総合課税と源泉分離課税とを比較すると、源泉分離課税は、通常20%の税率となっていますが、総合課税の税率は、課税所得に応じて変わりますので、運用益以外の所得が多く、総合課税の税率が高い人にとっては源泉分離課税が有利となります。
つまり、表面利回りは低くても、源泉分離課税の金融商品であれば、運用者の所得規模によっては、有利に運用できます。

(3)配当課税

≪1≫源泉徴収のみで申告不要
≪2≫20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税
(H25.12までは、上場株式については10%(所得税7%、住民税3%)となります。)
≪3≫総合課税で配当控除の適用
詳細はこちら

(4)金融資産に関するその他の課税関係

商品名 収入 所得区分 課税方法 申告
預貯金(国内口座) 利子 利子所得 源泉分離課税 不要
預貯金(海外口座) 利子 利子所得 総合課税
  外貨預金 利子 利子所得 源泉分離課税 不要
為替差益 雑所得 為替予約有→源泉分離課税 不要
為替差益 雑所得 為替予約無→総合課税
MMF 分配金 利子所得 源泉分離課税 不要
売却益 譲渡所得 非課税
利付債 利子 利子所得 源泉分離課税 不要
売却益 譲渡所得 非課税(平成27年12月31日まで)
償還益 譲渡所得 申告分離課税(平成28年1月1日以降)
雑所得 総合課税(平成27年12月31日まで)
譲渡所得 申告分離課税(平成28年1月1日以降)
割引債 償還益 雑所得 18%の源泉徴収(発行時、平成27年12月31日まで) 不要
譲渡益 譲渡所得 申告分離課税(平成28年1月1日以降)
譲渡所得 非課税(平成27年12月31日まで)
譲渡所得 申告分離課税(平成28年l月1日以降)
金(地金) 売却益 雑所得又は譲渡所得 総合課税
金(金貯蓄) 売却益 譲渡所得 源泉分離課税 不要
金(純金積立) 売却益 雑所得又は譲渡所得 総合課税
一時払養老保険 差益又は譲渡所得 一時所得 5年以下源泉分離 不要
5年超→総合課税

注1)源泉分離課税の税率は20%。内訳は国税15%、地方税5%。
注2)申告分離課税の税率は20%。内訳は国税15%、地方税5%。
注3)非課税所得については、損失の場合でも控除できません。
注4)地金・純金積立で雑所得となるのは、営利目的、継続的売買とされる場合、該当しない場合は譲渡所得。

コラム5

医療法人制度

厚生労働省は、平成19年医療法改正において、「公益性の高い医療法人」という新しい立場を創設し(社会医療法人)、新設の医療法人はすべて「持分なし医療法人」しか設立できないこととなりました。医療法人は医療法第54条に剰余金の配当をしてはならないと規定されており、これを基に営利を目的としない非営利法人とされています。ところが、医療法人の内部に財産を蓄積して退社時にまとめて剰余金を払い戻すことで、事実上の配当を行っているのではないか、これでは非営利性が徹底されていないという長年にわたる議論に決着をつけました。
出資持分のない医療法人はほとんどが基金拠出型医療法人と呼ばれる医療法人です。基金拠出型医療法人の基金とは、医療法人の財産として拠出されるものであり、法人を運営していくための原資となるものです。具体的には金銭のほか、土地や建物、診療所等の医療法人を設立するために拠出したものです。このような基金制度は「剰余金の分配を目的としない性格を維持しながら、活動の原資となる資金を調達し、財産基礎の維持を図るための制度」といわれています。基金拠出型医療法人は、設立したときの拠出額部分しか拠出者に返還されません。さらには、拠出金は債権のように利息のつくようなものではなく、金銭で拠出した場合についても、金銭以外の財産で拠出した場合でも、拠出時の価額で返還されることになります。
経過措置医療法人は現在、全医療法人のうち実に90%以上を占めています。そして、この形態の医療法人は当分の間財産権を持ったまま存続することになります。そして、経遇措置法人は現状のまま持分ありの医療法人でいくのか、持分なし医療法人に移行するかは法人の自主性に任されており、強制的な移行は求められないこととされていますから、当分の聞は相当長期間となるか文は無期限になると解釈されます。

5-5 医療法人設立の手続き

医療法人の設立の手続きについて教えてください。

(1)医療法人の設立には都道府県の認可が必要です。
(2)通常の会社設立に比較して設立に時間を要します。

(1)医療法人の設立

一般の事業の場合には、事業を開始しである程度の規模になると、事業形態を会社形態にします。
この点においては、医業であっても同様のことがいえます。事業の規模拡大に応じて、事業の内容を明確にし、家計と事業の区別を図るためには、法人化は欠かせないことだからです。しかし、医業の場合には医療法の規制により、一般事業者が法人化するよりも、難しい状況がありました。そこで、制度的にも医療法人の設立がしやすくなるよう、昭和60年に医療法が改正されました。
また、税金の面でも、個人と法人の税制改正が一巡し、現行制度上で考えると、法人化することによる不利はありません。
今後の医療行政を考えてみても、医療法人化が促進される方向にありますから、積極的に医療法人を検討していくことが重要となります。

(2)設立手続きの概要

医療法人の設立に際しては、都道府県が申請窓口となっています。事前相談から設立認可まで、この窓口を通じて手続きをしていくことになります。
また、申請にあたっては、設立申請手続き書の作成が必要になりますから、資料を整備したうえで、設立手続きを代行する専門家(税理士・会計士・医業コンサルタントなど)に相談することが必要でしょう。
05-05

5-4 世代交替のすすめ方

医業における世代交替について教えてください。

(1)世代交替は、医業の引き継ぎと医業財産の引き継ぎが必要です。
(2)医療法人の場合には、医療法人出資持分の移転も必要です。

(1)個人事業の場合の世代交替

個人事業の場合には、後継者の決定を前提として、事業主の交替と医業財産の承継により世代交替がなされます。
事業主の交替とは、具体的には所得税の申告上、後継者が主となり申告をする形態に、変更するということです。
医業財産の承継については、贈与、譲渡等により、後継者に移転する方法もありますが、税負担、資金調達等で困難である場合には、賃貸または共同利用の形態をとることになります。
この医業財産の承継については、その他の財産も含めた相続対策のなかで、進めることが重要です。

(2)医療法人の場合の世代交替

基金拠出型医療法人の場合には、医療法人の代表者である理事長の交替が世代交替となります。
持分の定めのある医療法人は、理事長の交替に加え出資持分の移転ができれば、実質的な世代交替ができることになります。
ただし、医療法人の出資持分についての評価額が、高額である場合には、移転が困難な場合もありますから、その場合には、医療法人の出資持分について、評価を引き下げる検討をしたうえで、移転対策を検討することになります。
理事長を退任後は、理事として医療法人にとどまることは可能ですので、あわせて検討されるとよいでしょう。

世代交替の方法によって違う相続税

05-04

5-3 タックスプランニング(2) 財産

財産に対してのタックスプランニングについて教えてください。

(1)資産蓄積のバランスを考えてください。
(2)相続税の対象になる資産を把握してください。

(1)開業時以降の資産蓄積のパターン

開業からの数年間は、税引後利益による金融資産の蓄積が中心となります。したがって、できるだけ税引後手取りが大きくなるようなタックスプランを心掛けることが重要です。
すなわち、収入が一定のもとで手取りを増加させるためには、税金部分を少なくしていくことになりますが、この点から個人事業から医療法人への転換があります。

(2)医療法人設立後の資産蓄積のパターン

個人事業から医療法人に転換したあとも、資産蓄積のパタンに変化はありません。
ただし、医業関係利益が、一部、医療法人にも蓄積されることに、違いがあります。

(3)相続タックスプランニング

医業の資産蓄積のパタンに沿った、相続タックスプランを考える必要があります。
≪1≫持分の定めのある医療法人の場合医療法人の出資持分については、後継者への移転を中心に考えていきます。医療法人の出資持分が後継者にほぼ移っていることを前提とすると、個人所有の不動産については医業用とそれ以外の資産に区別し、医業用資産については医療法人への移転を中心に考えます。それ以外の不動産については、賃貸不動産の運用を中心に、全体の相続財産の圧縮を検討します。
≪2≫出資額限度法人および基金拠出型法人の場合
≪1≫とは逆に、医療法人への資金の移転は慎重に行う必要があります。出資額限度法人も基金拠出型法人も、当初の出資額または基金分しか払い戻しがされないためです。
特に出資額限度法人の場合、医療法人の所有権の持分としての意昧があるため相続に際して高い評価額となりますが、退社して払い戻しを受ける場合、払い戻されるのは当初の出資額のみで、かつ、ほとんどのケスで残る社員への贈与が発生してしまいます。
また、せっかく蓄積した資金等も、法人が解散するなどの際には固または地方公共機関等の帰属となってしまいます。

医業財産の蓄積と法人化の概念図

05-03
持分の定めのある医療法人においては一定の財産蓄積後は法人に資産,利益の蓄積を移し,個人資産の増加を抑えることが可能です。

5-2 タックスプランニング(1) 収入

開業から医業運営にいたるタックスプランニングを教えてください。

開業年数・収入・所得等の状況によりタックスプランニングを教えてください。

(1)開業から3年目までのタックスプラン

開業から3年目までは、個人事業での運営が一般的ですから、所得税の思典を十分に活用することがタックスプランのポイントです。開業年は、通常課税計算上は赤字になりますから、税金の心配はありませんが、初年度の赤字を翌年度に繰り越しできるか否かが重要となります。
この赤字の繰り越しについては、個人ですと、青色申告を選択すると、3年の繰り越しが認められます。
したがって、開業時から青色申告を選択しておくことが重要です。このことにより、初年度の赤字を3年間の所得で吸収できることになります。

(2)3年目以降の医療法人設立

開業後3年、または初年度の赤字を吸収した時点で、個人事業から医療法人への転換を検討するべきでしょう。
個人事業の場合には、所得税が累進課税であるため、課税所得が高くなると税率も高くなり、結果的に税負担が大きくなります。したがって、3年目以降で、個人所得が1,800万円を超えた場合には、医療法人設立の検討を進めるべきでしょう。
また医療所得には、社会保険診療収入に対して一定の経費率を乗じて求めた額を必要経費として計上できる課税の特例制度があります。この特例を利用できるのは平成25年までは社会保険診療収入が5,000万円以下、平成26年からは総収入が7,000万円以下の個人医院ですので、収入がどの程度になるのかも医療法人化を考える1つのポイントとなります。医療法人設立後は、理事長報酬と、医療法人利益のバランスを検討していくことが重要となります。
さらに、医療法人契約による、理事生命保険の加入や、理事退職金制度の整備を通じて、医療法人の制度上のメリットをいかしていくことになります。

開業からのタックスプランニングのモデル

05-02
※所得と税率の関係は4-3のグラフを参照して下さい。

5-1 課税所得と資金繰り

利益が出ているのに、手許に現金がないのはなぜでしょうか。

(1)課税所得(利益)計算と資金計算にはずれがあります。
(2)「勘定あって銭足らず」の状況にならないように注意してください。

(1)課税所得計算と資金計算

全ての収入と全ての支出が、現金で取り引きされていれば、課税所得計算と資金計算は一致します。しかし、実際には利益は出ていても手許に現金がないという状態が、しばしばあります。
これは、課税所得計算と資金計算のしくみが、異なることによります。
たとえば、社会保険医療収入についてみてみると、本人負担としての窓口収入は毎日の現金収入となりますが、残りの医療収入は、請求後2ヵ月たたなければ現金となりません。
特に開業時においては、この状況が2ヵ月続きますから、資金計算を十分に検討して運転資金の準備をすることが必要です。

(2)借入金収入と返済

借入金は、将来返済しなければならない資金ですが、借入時には資金の増加をもたらします。これは医業収入とは異なり、収入はあっても利益に計上されるものではありません。
一方、借入金の返済については、金利部分は必要経費になりますが、元金の返済については必要経費にはなりません。この点も課税所得計算と資金計算のずれが生じる点です。

(3)資産の取得と減価償却費

土地を購入した場合には、財産の取得ですから資金の支出はありますが、その取得金額が必要経費になるものではありません。

課税所得と資金計算にはギャップがあります
05-01
建物、設備等の購入についても、同様に必要経費にはなりません。ただし建物・設備等の場合は土地とは異なり、時間の経過に応じて価値が減少していくため、減価償却という手続により毎年分割して必要経費になっていきます。このことにより、課税所得は減少するのですが、減価償却費の計上時には、資金支出はありません。

コラム4

相続税の役割

世界には相続税がかからない国があります。オーストラリア、スイス、香港、マレ ーシア、シンガポールなどです。高額な財産を消費し景気を活性化させていくという考えから相続税をOにしているのです。景気が、活性化されますと、所得税や消費税も壇え結果的に税収が増えるのです。

日本の相続税は、相続財産が多いほど税率が高くなる累進税率になっています。日本の最高税率は現在50%で、平成27年以降は55%になります。最高税率が70%だった平成14年までと比べると税率は低くなったとはいえ、半分以上は税金がかかってきます。
ところで、財産が親から子等へ移るだけにもかかわらず、どうして相続税がかかるので、しよう。これについてはいろいろな意見がありますが、代表的なものは次のこつです。

(1)所得税の補完機能

被相続人が生前において受けた社会及び経済上の要請に基づく税制上の特典、その他による負担の軽減などにより蓄積した財産を相続開始の時点で精算する、いわば所得税を補完する機能

(2)富の集中排除機能

相続により相続人等が得た偶然の富の増加に対し、その一部を税として徴収することで、相続した者としなかった者との間の負担の均衡を図り、併せて富の過度の集中を抑制機能

では、海外に移住したら相続税を払わずに済のでは、と考える方もいらっしゃいますが、海外に移住したとしても一定の条件を満たさなければ日本で相続税を払わなくてはいけません。

4-12 出資持分の移転

出資持分の移転について、その方法と留意点を教えてください。

(1)出資持分の移転については、だれに移転するか、どのように移転するかが重要です。
(2)持分の定めのある医療法人の出資持分を移転する場合には、移転の舗額算定が重要です。

(1)移転方法とその留意点

医療法人の出資持分については、配当が禁止されており、かつ議決権も一人一議決権の為、経営支配権によるメリットはありません。
ただし、医療法人の経営上の責任者である理事長については、原則として医師・歯科医師でなければなりません。つまり、医師・歯科医師である後継者が、医療法人の出資持分を負担なく所有できるように配慮することが、必要となります。
このようなことから、医療法人の出資持分の移転については、医業後継者が決定している場合には、その後継者を中心に移転をすることが重要です。

(2)移転価額とその留意点

出資持分の移転方法により、移転価額が決定されることになります。生前の移転となる、贈与と譲渡については、「相続税評価上の出資持分の評価」により移転することになります。ただし、贈与の場合には、金銭の移動がありませんが、贈与税の負担が生じます。贈与税は、出資持分の贈与を受けた人が支払うことになっていますので、贈与税の納税資金の準備についても、検討することが必要です。
譲渡による移転については、譲渡金額にかかわる金銭の移動が生じます。つまり、出資持分の取得者から譲渡者に、譲渡代金の支払がなされることになります。
04-12
この場合には、譲渡者に対して譲渡所得税(所得税・住民税合わせて譲渡所得の20%)が課せられます。
したがって、譲渡の場合には、移転を受ける側は譲渡代金の準備、譲渡する側は譲渡所得税の支払が必要となります。

4-11 出資持分の評価(2) 評価の大小

持分の定めのある医療法人、出資額限度法人の出資持分の評価方式について教えてください。

(1)出資持分は、土地等の含み益が生じている場合には、評価が高くなります。
(2)利益蓄積が大きい場合にも、評価が高くなります。

(1)純資産価額方式による出資持分の評価

純資産価額方式による出資持分の評価では、帳簿上の純資産額と、相続税評価上の純資産額を比較して、その含み益について約58%(清算法人税相当額として42%控除)が、出資持分の評価に反映されることになります。
したがって、医療法人が土地を所有していて、時間の経過とともに土地の評価が上昇した場合には、出資持分の評価が上昇する可能性があります。ここでいう土地の相続税評価は、路線価によりなされます(公示価格の80%程度の価格)。
純資産価額方式による評価が高い場合には、その含み益相当額を圧縮していかなければ出資持分の評価金額は下がりません。
たとえば、借入金による医院の建て替え、医業関連不動産の購入等により、出資持分の引き下げを検討することが必要でしょう。

(2)類似業種比準価額方式による出資持分の評価

類似業種比準価額方式による出資持分の評価には、帳簿上の利益、純資産額により、出資持分を評価することになります。
したがって、医療法人の利益が高く、利益蓄積が大きい場合には、出資持分の評価金額が高くなります。
一方、土地等の含み益があっても、類似業種比準価額方式の評価上は、反映されることがありません。
類似業種比準価額方式による評価が高い場合には、利益水準を引き下げ、利益蓄積を抑制していくことにより、出資持分の評価金額が下がってきます。
また、過去の利益蓄積については、理事長退職金等により圧縮することが可能です。

04-11

4-10 出資持分の評価(1) 評価方式

持分の定めの抗医療法人・出資限度額法人の出資持分について教えてください。

(1)出資持分の評価は、出資者の状況と医療法人の規模により決定します。
(2)評価方法は、純資産価額方式と類似業種比準価額方式とがあります。

持分の定めのある医療法人・出資限度額法人の出資持分の評価は次のように考えます。

(1)医療法人規模の決定

医療法人の出資持分の評価は、その規模に応じて、評価方式を決定することになっています。
医療法人規模は、従業員数・従業員数を加昧したところの総資産価額・取引金額により、大会社・中会社・小会社に区分されます。

(2)評価方法の決定

会社規模が決定されると、各々の会社規模に応じた評価方法を決定することになります。
小会社の場合には、純資産価額方式を原則としますが、併用方式の評価金額が低い場合には、その金額によることができます。
中会社の場合には、併用方式によることとなります。併用割合は会社規模に応じて「L割合」(下図参照)により算定することになります。ただし、算式において選択により、類似業種比準価額にかえて、純資産価額をとることができます。
大会社の場合には、類似業種比準価額方式を原則として、純資産価額方式の評価金額が低い場合には、その金額によることができます。
なお、評価する医療法人が、株式保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社、開業前又は休業中の会社などに該当する場合、この評価方式によらず、原則純資産価額方式により評価することになります。

医療法人の規模と評価方式

医療法人規模の判定

規模区分 小会社 中会社 大会社
区分の内容→ 従業員数が100人未満で下のいずれにも該当 従業員数が100人未満で下のいずれかに該当 従業員数が100人以上または下のいずれかに該当
 ↓判定項目
総資産価額および従業員数 4,000万円未満または従業員数が5人以下 4,000万円以上(従業員数が5人以下の会社を除く) 10億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く)
直前期末以前l年問における取引金額 6,000万円未満 6,000万円以上20億円未満 20億円以上

評価方式

小会社 中会社 大会社
純資産価額方式 (併用方式が低い場合にはその価額) 併用方式 類似業種比準価額×L+純資産価額×(1-L)(純資産価額の選択可 類似業種比準価額方式(純資産価額方式が低い場合にはその価額)

注:純資産価額方式 解散した場合の持分評価を想定して評価する方法。時価に近い評価となります。
類似業種比準価額方式同業他社(医療法人など)の平均株価に比準して評価する方法。含み益は直接は表れてきませんが,高収益をあげている場合,評価額がかなり高くなる場合もあります。

L割合

L割合→ 0.6 0.75 0.9
↓判定項目
総資産価額および従業員数 5,000万円以上4億円未満(従業員数が5人以下の会社を除く) 4億円以上7億円未満(従業員数が30人以下の会社を除く) 7億円以上(従業員数が50人以下の会社を除く)
直前期末以前1年間における取引金額 8,000万円以上7億円未満 7億円以上14億円未満 14億円以上20億円未満

*小会社にて併用方式を用いる場合,L割合は常に0.5となります。

4-9 医療法人の出資持分の意昧

医療法人の出資持分の内容、留意点について教えてください。

(1)医療法人の出資持分は社員総会における議決権に影響じません。
(2)出資持分は、利益の蓄積、および不動産の値上がりにより評価が上がります。
(評価方法については4-104-11、移転については4-12をご覧ください)

(1)医療法人の出資持分および基金の内容

持分の定めのある医療法人や出資額限度法人を設立したときに出資した金額が出資持分であり、基金拠出型法人に拠出した金額が基金です。これは、出資または拠出した財産と債務の差額として表される金額です。
出資持分は、出資者ごとの出資口数により、全体の中の持分が決められています。対して、基金は持分の考え方はありません。
一般の会社の場合には、出資持分等が議決をするための手段であると同時に、配当を得る基準となりますが、医療法人の場合には、議決権が出資額または拠出額に応じて異なることはありません。社員総会において、各社員が等しいl票の議決権を行使します。また、配当が禁止されていますから、出資持分または基金を所有していることは、所有権の持分または基金返還請求権を有しているという意昧しかありません。

(2)持分の定めのある医療法人の出資持分の評価

持分の定めのある医療法人の設立時は、出資金額の価値しか有しませんが、その後の医療法人での利益の蓄積や、所有不動産の値上がりなどによって、評価金額が上昇することになります。
特に医療法人の場合には、配当が禁止されていますから、利益が内部蓄積されることにより評価金額が高額になる傾向があります。
さらに、所有不動産の値上がりに対して、評価圧縮のための対策をとる場合にも、医療法人の場合には、医療用以外の資産への投資が禁止されているため、評価圧縮対策をとりにくいという面もあります。したがって、医療法人を運営していくには、この点に対して留意することが必要です。

出資持分の移転

04-09

4-8 医療法人運営上のメリット(3) 退職金

医療法人における理事長退職金について教えてください。

(1)理事長退職金の支給について役員退職金規定の整備が必要です。
(2)退職金支払のための支払原資の確保が必要です。

(1)理事長退職金支給金額の決定

個人事業の場合の事業主に対しての退職金は、所得税法上は認められていません。
医療法人の場合には理事長に対して支払う退職金について、その金額が適正額の範囲で認められています。
適正額の判断は、第一に医療法人の役員退職金規定、第二に対外的な基準によりなされます。
役員退職金規定については、過去の運用の経緯も考慮してあらかじめ作成、整備しておくことが重要です。
対外的な判断基準は、その支払った退職金が過大退職金として税務上認定されないかということがあります。
この場合には、役員退職金規定を整備した上で、次の算式により算定された金額を基準にされるとよいでしょう。

理事長退職金=適正月額報酬X勤続年数X功績倍率

(注) 功績倍率は3倍程度が基準です。

(2)支払原資の確保

理事長退職金は、一時に多額の支出を伴うものですから、その支払原資については、計画的に準備する必要があります。
生命保険の活用による節税プラン
<A生命保険会社の例>
・保険種類:長期平準定期保険
・45歳男性
・100歳満了
・死亡受取人:医療法人
・年払保険料:2,254,300円
・保険金額:1億円
・契約者:医療法人
・実効税率:35%

(単位:千円)

経過年数 年齢 A B C D E F G
支払保険料累計 損金計上額累計 (B×0.35)
節税累計
(A-C)
実質累計
解約返戻金 (E/A)
単純返戻率
(E/D)
実質返戻率
1年 46 2,462 1580 553 1,909 1580 64.10% 77.70%
5年 50 10,312 6.156 2.155 8,157 10,370 84.20% 102.00%
10年 55 24,624 12312 4,309 20,315 21,470 87.10% 105.60%
15年 60 36936 18468 6,464 30,472 32360 87.60% 106.10%
20年 65 49248 24624 8,618 40,630 43270 87.80% 106.40%
25年 70 61,560 30780 10,773 50,787 53,720 87.20% 105.70%
30年 75 73,872 36,936 12,928 60,944 63,460 85.90% 104.10%
35年 80 86,184 49248 17,237 68.947 72,190 83.70% 104.70%
43年 88 105883 83721 29.302 76,581 82,650 78.00% 107.90%
50年 95 123,120 113886 39,860 83,260 82,260 66.80% 98.70%

(平成25年6月現在,圏内生保)

※実質返戻率の最も高い43年目で解約した場合,下記のようになります。
04-08
43年で解約した場合、保険料累計は105,883千円となりますが、29,302千円の節税効果があるため、実際には76,581千円の負担で済み、実質負担を6,069千円上回る82,65ο千円の解約返戻金をうけることとなります。また、実質返戻率が100%を超えている期聞が長いので退職する時期に幅をもたすことができます。

その原資については、医療法人の利益蓄積から支払う場合や、不動産処分により支払う場合等がありますが、現状の医療法人の運営に影響を与えないためには、法人契約による生命保険の活用等により、支払原資を確保しておくことが必要でしょう。

4-7 医療法人運営上のメリット(2) 生命保険

医療法人の設立による個人生命保険の活用を教えてください。

(1)法人契約の生命保険は積立型(資産計上)と掛捨型(損金計上)があります。
(2)役員の生命保険加入と役員退職金制度を設けることにより有用性が増します。

(1)医療法人と生命保険の加入

個人事業の場合には、個人の生命保険については、一定の所得控除があります。
医療法人の場合には、積立型の生命保険については、支払い金額が資産計上され、損金とはなりません。一方、掛捨て型の生命保険については、支払い金額が損金となります。従来個人で加入していた生命保険を見直し、法人契約にすることによって、医療法人の利益の中から保険料を支払い、損金とすることができるわけです。(支払保険料と節税効果の関係については4-8参照)

(2)法人契約生命保険と役員退職金

法人契約で生命保険に加入した場合には、支払保険料については医療法人の支払いになりますが、一方、生命保険の受け取りも医療法人となります。したがって、このままでは生命保険金が個人の財産となりません。そこで、法人契約の場合には、同時に役員退職金規定も整備し、生命保険金の受け取りが生じた場合(死亡保険金等)に、役員退職金として支出するための準備をしておくことが重要です。(退職金の設定方法については4-8参照)
このことにより、医療法人で、受け取った生命保険金を、役員退職金として、個人に支払うことができるわけです。

法人契約と役員退職金をセットで

04-07

4-6 医療法人運営上のメリット(1) 役員報酬

医療法人の役員報酬の設定の方法について教えてください。

(1)同収入でも医療法人の理事長報酬の場合には、給与所得控除の適用があります。
(2)適正理事長報酬の決定が重要です。

(1)理事長報酬と給与所得控除

個人事業の場合には、課税所得がそのまま個人所得税の対象となりますが、医療法人の場合には、一定の給与所得控除後の金額が課税所得となります。
たとえば、所得1,000万円の場合には、個人課税の場合に276万円の所得税、住民税となります。一方、医療法人で所得1000万円となり、その全額を理事長報酬として支払った場合には、1000万円の給与として取扱われますから、その給与から一定の給与所得控除を差し引いた金額が、個人の課税所得となります。この場合には、194万円の所得税・住民税となり、個人事業と比較して約30%程度課税所得が圧縮されることとなります。
このように、医療法人を設立し、所得を理事長報酬に転換することによって、実質手取りを増加させることができます。

(2)適正理事長報酬の決定

適正理事長報酬の決定については、第一に相対的適正金額の決定、第二に個人・医療法人比較による適正金額の決定があります。
相対的適正金額の決定は、同規模の医療法人等に比較して、理事長報酬が適正かという問題です。しかしながら、他の医療法人の理事長給与の資料を、入手することは容易ではありません。したがって実際には、各医療法人が利益をにらみながら理事長報酬を決定することになります。

個人事業と理事長給与(役員報酬)との税額の差

(単位:万円)

所得区分 (1)個人所得税・住民税合計 (2)理事長給与税金 (①・②)金額(減税額)
600 137 85 △52(38%)
800 200 137 △63(31%)
1,000 276 194 △82(29%)
1,200 362 263 △99(27%)
1,400 448 345 △103(23%)
1,600 534 429 △105(20%)
1,800 620 515 △105(17%)
2,000 720 601 △119(17%)
2,200 820 697 △123(15%)
2,400 920 797 △123(13%)

(注1)所得控除は考慮していません。単純に所得区分における所得税・住民税を表示しています。
(注2)(1)は所得区分の数字を事業所得とし、(2)は給与収入として計算しています。

なぜならば、医療法人が設立後に設備投資や借入金返済を行うためには、その原資となる利益を蓄積する必要があるからです。
また、医療法人利益を全額理事長報酬とすることは、給与所得控除によるメリットはありますが、医療法人化による法人税課税の優位性を失うことになりますから、この点からも医療法人利益と理事長報酬の適切な配分が必要となります。

4-5 個人から医療法人への判断基準(3) 相続対策

将来の相続対策も考えた医療法人の設立方法を教えてください。

医療法人の設立後は、役員報酬の設定と設備投資計画が重要です。

(1)医療法人の設立と相続対策

個人事業で医業を継続してL瓦く場合には、医業用資産の含み益の増加と年度利益の蓄積が個人財産となります。
したがって、医療法人の設立に際して、将来の相続対策を考える場合には、第一に医業用資産の移転、第二に年度利益の蓄積の移転が重要です。
医療法人の設立に際して、医業用資産の移転を考える場合には、個人から医療法人に資産を移転する場合の、譲渡所得税を考慮、に入れなければなりません。土地などの購入時点が最近であり、医療法人設立時において、その含み益が発生していないような場合には、移転に伴う譲渡所得税はさほど発生しないことになりますが、購入時から相当の期間経過していて、含み益が生じている場合には、
譲渡所得税が多額となり、移転が難しいことになります。その場合には、医業用資産を個人から法人に移転せず、賃貸により設立することになります。
仮に医業用資産を医療法人に移転できた場合には、移転後の含み益については医療法人に帰属することになりますから、個人所有の場合と比べて相続財産の圧縮につながります。
また、年度利益の蓄積の移転については、個人事業として継続する場合には、年度利益金全てが、個人財産となりますが、医療法人の場合には理事長報酬差し引き後の、年度利益が法人財産になります。したがって、理事長報酬を、個人と医療法人の税金を考慮、した、最適額で設定すれば、効率的に医療法人に蓄積することになります。

個人から医療法人への判断規準

04-05
このことにより、個人財産の蓄積、増加を避けることができます。

(2)医療法人設立時の留意点

医療法人の附帯業務は限られています。医業用資産は法人に移転させることはできますが、医業と関係のない、例えば、賃貸用不動産などを多く持っていた場合には、その資産は医療法人に移転させることはできません。

4-4 個人から医療法人への判断基準(2) 後継者

後継者の点からみた医療法人移行の判断基準を教えてください。

(1)医療法人の理事長は原則医師・歯科医師であることが必要です。
(2)後継者が医師・歯科医師以外の場合には、医療法人の理事として医療法人を運営することができます。

(1)後継者が医師・歯科医師の場合

医師・歯科医師の後継者がいらっしゃる場合には、個人事業でも医療法人でも医業継承については、それほど差異は生じません。
個人事業の場合には、個人所有の医業財産を後継者に引き継ぎ、または賃貸することにより、後継者が個人事業主となります。
また、相続の場合には、個人所有の医業財産を、後継者が相続することにより引き継ぎを行うことになります。
医療法人の場合には、医業財産については、医療法人所有となっていますから、後継者への引き継ぎは、持分のある医療法人については、第一に後継者の社員及び理事就任、第二に出資持分の移転、基金拠出型医療法人については後継者の社員及び理事就任により行います。

(2)後継者が医師・歯科医師以外の場合

医師・歯科医師の後継者がいらっしゃらない場合には、後継者は理事長以外の役員として医療法人の運営にあたり、役員報酬により、収入を得ることになります。また、医療法人の理事長は原則として医師又は歯科医師でなければなりませんが、都道府県知事の認可を受けた場合には、例外的に医師又は歯科医師でない理事の中から理事長を選任することができます。
04-04

(3)後継者がいない場合

後継者がいない場合には、医療法人を解散させるか、第三者に一括譲渡又は他の医療法人と合併することになります。
出資持分を、医療法人の解散により回収する場合には、出資時の金額と解散時の金額との差額に対して、税金が発生することになります。
出資額限度法人の出資持分および基金拠出型法人の基金を解散により回収する場合には、当初の出資額または拠出額を限度として払い戻しがされるため、税金は発生しません。
ただし、残余財産は国や地方公共団体に帰属することとなります。

4-3 個人から医療法人への判断纂準(1) 税務

個人から医療法人ヘ移行する場合の税務上の判断基準を教えてください。

(1)偶人の所得が一定額を超える場合は法人化した方が税務上有利といえます。
(2)医療法人設立後は、院長は医療法人からの理事長報酬を得ることになります。

(1)医療法人設立による個人の税金

個人事業の場合には、収入と経費の差額が個人所得として所得税の対象になります。所得税は、所得が高くなればなるほど税率も高くなるという、超過累進税率となっています。したがって、所得が高い場合には、所得の伸び以上に税金が増加することもあり、手取りがさほど増えない、という結果になります。
医療法人の場合には、医療法人に対して法人税が課せられますが、その法人税は段階比例税率になっています。そのため、一定以上の所得については一定の法人税率によりますから、所得が高い場合には、個人所得税と比較して税金増加が少なくなります。
所得が一定額を超えると法人税の実効税率が個人所得税の実効税率より低くなりますので、医療所得を全て医療法人に帰属させた場合には、個人所得税より医療法人が支払う法人税の方が少なくなります。

(2)理事長報酬の設定

ただし、医療法人から理事長に対して、理事長報酬を支払うことになりますから、理事長報酬差引後の所得で個人所得税と法人税のどちらが有利になるかを比較しなければなりません。
その点を考慮すると、理事長報酬は個人所得税と法人税の実効税率がほぼ同率になるところで設定し、それ以上については医療法人に帰属させるとした場合が有利となります。

個人所得税と法人税との税率比較

04-03
(注)住民税・事業税は考慮しておりません
(注)平成24年4月1日から平成27年3月31日の間に開始する各事業年度

4-2 医療法人の設立の状況

医療法人設立の状況を教えてください。

・平成24年3月末で約47,825件の医療法人の設立認可がなされています。
・医療法人の増加要因は税務上の要因が影響しています。

(1)医療法人設立の概況

平成24年3月現在、医療法人の認可件数は47,825件となっています。このうち1人医師医療法人の設立は医科が32,150件、歯科が7,797件で総数39,947件と83%を占めています。又、図で示す通り、年々増加しており、医療法人設立が定着してきた状況がわかります。

(2)今後の動向

医療法人の設立については、厚生労働省も積極的な姿勢をしめしているばかりでなく、行政全体が方向性として、医療法人設立に向かっています。
さらに、税務上の問題で考えると、個人の所得税が累進課税方式に対して法人税は段階比例税率で課税されます。したがって課税所得が一定水準を超えますと、あきらかに法人税のほうが有利になります。また役員報酬からは245万円まで給与所得控除も受けられるため重ねて有利になります。平成27年以降は所得税の最高税率が45%に引き上げられることになりましたので、今後は事業所得が高い場合には法人化を検討することが必要になります。

医療法人の推移

04-02

都道府県別医療法人数の状況(平成24年3月31日時点)

摘要 病院 医科 歯科 摘要 病院 医科 歯科 摘要 病院 医科 歯科
北海道
青森
岩手
宮城
秋田
山形
福島
茨城
栃木
群馬
埼玉
千葉
東京
神奈川
新潟
富山
530
72
67
161
81
51
106
230
203
115
361
280
588
425
57
73
1389
218
224
500
191
331
593
500
456
546
1416
1096
3162
1818
722
145
517
49
48
72
48
70
91
98
67
99
438
371
1263
622
151
51
2436
339
339
733
320
452
790
828
726
760
2215
1747
5013
2865
930
269
石川
福井
山梨
長野
岐阜
静岡
愛知
三重
滋賀
京都
大阪
兵庫
奈良
和歌山
鳥取
島根
63
59
45
102
138
128
374
106
48
170
296
228
91
79
35
61
287
191
145
499
441
998
1240
438
311
587
2675
1382
305
271
226
228
82
45
27
105
90
133
240
79
45
121
641
284
42
42
65
52
432
295
217
706
669
1259
1854
623
404
878
3612
1894
438
392
326
341
岡山
広島
山口
徳島
香川
愛媛
高知
福岡
佐賀
長崎
熊本
大分
宮崎
鹿児島
沖縄
合計
155
194
122
79
96
136
162
492
101
152
206
182
104
187
87
7878
634
1004
532
393
336
604
179
1747
247
542
659
388
373
674
307
32150
130
161
62
106
73
147
39
290
51
104
125
60
74
163
64
7797
919
1359
716
578
505
887
380
2529
399
798
990
630
551
1024
458
47825

4-1 医療法人制度

現在の医療法人制度はどのようになっているのでしょうか。

通常設立される法人に限れば、設立した時期や定款により、医療法人の形態は「持分の定めのある社団医療法人」、「出資額限度法人」、および「基金拠出型法人」に分類されます。

(1)医療法改正

原則として医療法人は配当禁止であり、また営利事業を行うことができません。しかし、社員退社時に剰余金部分を含めた出資持分の払出しを行うことが出来ますし(実質的配当)、MS法人を利用した営利目的化が見受けられていました。また、公から民への公共医療の移行の要請があったため、医療法が改正され(平成19年4月1日施行)、医療法人制度も大きく変わりました。

(2)持分の定めのある医療法人

持分の定めのある医療法人とは、平成19年医療法施行前に設立された法人で通常設立された形態です。この形態は出資持分に応じて法人の持分を出資者である社員が保有しています。
この形態の医療法人は、医療法改正により設立することが出来なくなりました。したがって、この法人形態で医療法人運営を行う場合には、現存する当該形態の法人格を購入してくる方法をとる乙ととなります。

(3)出資額限度法人

出資額限度法人とは、(2)の持分の定めのある医療法人のうち、退社や死亡による出資金の払戻をその出資額を限度とする旨定款で定めている医療法人のことをいいます。全ての社員に出資金を払い戻した後に残る残余財産については、国等ヘ帰属させることとなります。
この形態の医療法人も新医療法施行後は設立が出来なくなりましたので、持分の定めのある社団医療法人同様、この形態を望まれる場合には現存する当該形態の法人格を購入する方法しかありません。

(4)基金拠出型法人

平成19年4月1日の新医療法施行後に通常設立される医療法人の形態です。この医療法人は持分の定めがなく、また、基金の払い戻しも拠出された基金を限度としてしか行われません。解散時全ての拠出者に基金を払い戻した後に残る残余財産については、国等ヘ帰属させることとなります。
04-01

平成19年4月以降設立できる医療法人は、新法の医療法人のみ
(財団医療法人又は社団医療法人であって持ち分の定めのないもの)
※経過措置型医療法人(旧法の医療法人)は、平成19年4月以降設立不可

(出典:ワタキューメデイカルニュースNo.174一部加工)

コラム3

タワーマンションの分譲価格と相続税評価額

1.タワーマンションの分譲価格は上層階になればプレミアム価格が上乗せされる

都心部では不動産の再開発が進み、いたるところにタワーマンションが建設されています。このタワーマンションは一般的に上層階になればなるほどプレミアム価格が上乗せされ、分譲価格が高く設定されています。たとえば、2階北向きの部屋の分譲価格が3,000万円だとした場合、同じ間取りの30階南向きの部屋は高層階で眺望がいいいためプレミアム価格が上乗せされ分譲価格が8,000万円になるというようなことです。
では、相続や贈与を考えた場合これらの2物件の相続税評価額はどのように算定されるのでしょうか?

2.同じ間取りの2階北向きの部屋と30階南向きの部屋とでは相続税評価額は閉じ

普通は分譲価格が高いほうが評価額も高くなると考えてしまうかもしれません。しかし実は同じ間取りの2階北向きの部屋と30階南向きの部屋とでは、相続税評価額は同じ評価額になるのです。
どうしてそのようになるのかといいますと、マンションの分譲価格は近隣の専有面積あたりの単価を相場として設定され、階層の上下や部屋の向きなどの要素も価格に反映されますが、相続税評価額は、建物部分は専有部分と共有部分の面積を按分した自分の持分の「固定資産税評価額jを基に評価されるためです。固定資産税評価額は面積を基に算定されるのであり、上層階であるため上乗せされたプレミアム価格や部屋の向きなどの要素は相続税評価額にはまったく関係ないのです。(なお、一般的に相続税評価額は市場での価格に比べ低くなるように設定されています。)
したがって、2階北向きの部屋を3,000万円で購入しでも、30階南向きの部屋を8,000万円で購入しでも、仮に土地持分の評価と建物持分の固定資産税評価額による評価の合計が2,000万円だとした場合には、両物件とも同じ2,000万円で評価されることになります。
つまり8,000万円-3,000万円5,000万円のプレミアム価格は相続税評価の対象とはならず、プレミアム価格が上乗せされた上層階のマンションの購入は相続税の節税につながるといえます。

3.将来の申古不動産相場、流通性のある間取りと価格帯、物件の老朽化などの老慮も

プレミアム価格が大きければ大きいほど節税の効果は高くなりますが、将来物件を売却することを念頭に置いた場合、プレミアム価格は中古不動産相場の市況や経年による物件の老朽化などの影響を受けることを留意する必要があるでしょう。また、間取りや価格帯によっても物件の市場流通性は異なってきます。たとえば極端なケースですと10億円のワーンルームのような物件は一般的に流通性が高い物件とはいえないでしょう。
タワーマンションの節税方法は現在の節税効果だけではなく将来の財産価値や処分可能性を考慮にいれた総合的な判断が必要だといえそうです。

3-15 遺言の活用

遺言の作成方法と注意点を教えてください。

遺言には一般的に二種類あり、遺留分を侵害しないように作成する必要があります。

(1)遺言の種類

遺言の種類には一般的に公正証書遺言と自筆証書遺言の二つの方式があります。
≪1≫公正証書遺言
国の公的機関である公証人に作成してもらい、原本を公証人役場に保管してもらう形式の遺言です。法律の専門家である公証人に作成してもらうので、安全で確実です。ただし、遺言内容を秘密にできない、費用がかかるといった欠点があります。
≪2≫自筆証書遺言
遺言者が、遺言書の全文・氏名を自署し、押印することにより成立する遺言です。遺言者が一人で作成できるため、簡便で遺言の内容だけでなく作成したこと自体も秘密にすることができます。反面、法定の要式を欠くと無効になってしまったり、偽造がされやすいといった短所があります。

(2)遺留分

遺留分とは、遺産について相続人に保障されている最低限の権利です。これは、下の表のような割合で決まっています。遺言作成時にはこの遺留分を考慮、する必要があります。
遺留分を侵害するような遺言を作成してしまいますと、侵害された相続人から遺留分減殺請求を起こされてしまい、遺言が思い通り実行されないことがあります。

相続人 配偶者のみ 配偶者と子供 配偶者と父母 配偶者と兄弟姉妹 父母のみ
配偶者 子供 配偶者 配偶者 兄弟姉妹
相続分 1/2 1/2 2/3 1/3 3/4 1/4
遺留分 1/2 1/4 1/4 1/3 1/6 1/2 1/3

(3)遺言により行うことができる事項

.相続分の指定又はその指定の委託(遺留分に注意)
.遺産分割の方法の指定または指定の委託
.遺産分割の禁止(相続開始後5年以内の期間)
.遺言執行者の指定または指定の委託
.認知 など

3-14 贈与税の暦年課税

贈与税の暦年課税制度について教えてください。

暦年課税制度は、年間110万円までの非課税枠があり、110万円を超えると、超えた金額に対して累進課税で贈与税がかかります。

(1)暦年課税

その年の1月1日から12月31日までの1年間に贈与によりもらった財産の価額を合計し、その合計額から基礎控除額110万円を差し引いた残りの金額に対し、贈与税がかかります。1年間にもらった財産の合計が110万円以下であれば、贈与税を納める必要はありません。
1年間に複数の人から贈与を受けた場合、その贈与を受けた財産の価額の合計額から控除できる基礎控除額は贈与者の人数にかかわらず110万円となります。

(2)税率

税率は、平成26年12月31日までは1050%の6段階の超過累進税制になっています。平成27年1月1日以後は1055%の8段階になります。

(3)生前贈与加算と贈与税額控除

相続などにより財産を取得した人が、被相続人の死亡前3年以内に贈与を受けていた場合には、その贈与を受けた人の相続税の課税価格に贈与を受けた財産の贈与の時の価額を加算します。また、その加算された贈与財産の価額に対応する贈与税の額は、加算された人の相続税の計算上控除されることになります。

(4)メリット・デメリット

暦年課税の場合、相続開始前3年以内に贈与を受けた財産は、相続財産から切り離されますので相続財産を減らすことができます。また、110万円の非課税枠を毎年使うことできますので時間をかければ節税効果があります。しかし、非課税枠が110万円なので、時間をかけて贈与していくことが必要になり、多くの財産を一度に贈与したい場合には税額が高くなるというデメリットがあります。

(5)贈与税の速算表

≪1≫平成26年12月31固までの贈与

課税価格(贈与税‐1,100,000円) 務機 控除額
200万円以下の金額 10%
300万円以下〃 15% 10万円
400万円以下〃 20% 25万円
600万円以下〃 30% 65万円
1,000万円以下〃 40% 125万円
1,000万円超の金額 50% 225万円

(例)贈与財産の価額の合計が200万円の場合贈与税額の計算(200万円-llO万円)×10%=9万円
贈与財産の価額の合計が500万円の場合
贈与税額の計算(500万円-llO万円)×20%-25万円53万円

≪2≫平成27年1月1日からの贈与
(i)20歳以上の子・孫への贈与

課税価格(贈与税‐1,100,000円) 税率 控除額
200万円以下の金額 10%
400万円以下〃 15% 10万円
600万円以下〃 20% 30万円
1,000万円以下〃 30% 90万円
1,500万円以下〃 40% 190万円
3,000万円以下〃 45% 265万円
4,500万円以下〃 50% 415万円
4,500万円超の金額 55% 640万円

(ii)一般の贈与

課税価格(贈与税‐1,100,000円) 殺事事 捜隊額
200万円以下の金額 10%
400万円以下〃 15% 10万円
600万円以下〃 20% 25万円
1,000万円以下〃 30% 65万円
1,500万円以下〃 40% 125万円
3,000万円以下〃 45% 175万円
4,500万円以下〃 50% 250万円
4,500万円超の金額 55% 400万円

3-13 配偶者への2,000万円贈与の特例

贈与税の負担がかからずに、妻に財産を移転するよい方法はないでしょうか。

配偶者への2,000万円贈与の特例を活用されてはいかがでしょうか。

(1)非課税で配偶者に贈与できるチャンスが一度だけある。

一生に一度だけ、配偶者に対して非課税で居住用不動産を贈与できる特例があります。
これは、ある一定の条件を満たす場合、配偶者に対して、居住用不動産を贈与しても、課税価格から2000万円を控除した上で、贈与税を計算することができるという特例です。ですから、贈与時の相続税評価額で、2,000万円(基礎控除を加えると2110万円) までの範囲であれば、贈与税はかかりません。

(2)配偶者への2,000万円贈与の特例の適用要件

≪1≫婚姻期間が20年以上であること。
≪2≫贈与する財産が居住用不動産、またはそれを購入するための資金であること。
≪3≫贈与を受けた翌年3月15日までに、その居住用不動産に住んでおり、その後も引き続き居住する見込みであること。
≪4≫同じ配偶者から過去に受けた贈与についてこの特例の適用を受けていないこと。
つまり、結婚後20年を経過すれば、相続税評価額ベ スで2,000万円(基礎控除を加えると2,110万円)までの範囲で自宅を贈与しても贈与税はかからず、将来の相続税の負担を減らすことができることになります。
03-13

(3)居住用不動産を譲渡する場合にもメリット

さらに居住用不動産を譲渡した場合、譲渡益から3000万円を控除できるという特例もあります。ですから、自宅の持分を夫から妻に贈与し、夫婦共有名義にしておけば、売却時には、夫と妻のそれぞれが譲渡益から3,000万円を控除でき、合計6,000万円を控除することが可能となります。

(4)相続対策としても有効

この配偶者への2,000万円贈与は、安全確実な相続税対策です。2,000万円贈与の特例を利用すれば、相続財産から居住用財産を分離でき、その分相続税の負担を軽減することが可能です。
結婚20周年の記念に、奥様に居住用財産の一部をプレゼントしてみてはいかがでしょうか。

3-12 賃貸不動産の売却による納税資金対策

資産の大部分は診療所、賃貸アパートなどの不動産です。相続対策として今のうちに売却、現金化しておいた方がよいでしょうか。

現金は評価減ができません。換金性の高い不動産で、最大限評価減をとることによって相続税対策を行い、相続発生時に売却または物納することを考えてみてください。

(1)処分可能な不動産の確保が納税資金対策になる

相続税は、一時に金銭で納付することを原則としているため、相続財産の大部分が不動産である場合には、不動産を処分しなければならないことになります。不動産がいくつもあり、どれかを処分すれば良いということであれば問題ないのですが、相続財産額の大部分が、医院と自宅だけであったら、売却するわけにはいきません。だからといって、相続税を納めない訳にもいかないのです。そこで、納税資金となる不動産を確保するためにも、残す財産と処分できる財産を区別しておくことが、必要となります。もちろん現金で残しておけば納税できますが、その分相続財産の評価額も大きくなり、納税額も多くなります。これに対して換金性の高い収益物件(賃貸用不動産)で評価減を最大限とれるものであれば、現金で残すより有利となります。

(2)不動産売却による相続税の納税

土地を売却して相続税を納税する場合、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば、売却していない土地も含めて、相続した土地すべてに係る相続税を土地の売却益から控除できる特例があります。(相続税額の取得費加算の特例制度)
この特例を受けるためには、次の要件が必要です。
≪1≫相続または遺贈による財産取得
≪2≫相続税を支払っていること
≪3≫相続により取得した財産の売却
≪4≫その売却した時期が、相続税の申告期限の翌日から3年以内であること

03-12

(3)物納の選択は慎重に

相続税は金銭一時納付が原則ですので相続人固有の預貯金等も現金納付に充てられ、さらに延納に充てられる金額も考慮、した上で物納の選択が可能になります。安易に物納を選択できませんので、注意してください。なお、相続税の支払いを物納で行うためには、次の点をよく検討する必要があります。
≪1≫当該土地の売却価額(時価)は、相続税評価額と比較して高いかどうか
≪2≫売却後の手取額で売却と物納を比較しているか(売却した場合、(2)の相続税額の取得費加算の特例制度を考慮、して手取額を計算します。物納の場合、譲渡所得税は非課税となるので、相続税評価額がそのまま物納価額となります。)
≪3≫当該土地は物納の条件を満たしているか(管理や処分するのに不適当な土地は物納することができませんので注意が必要です。)
≪3≫相続税の申告期限から3年以内の売却等、相続税の取得費加算の特例制度の要件を満たしているか

3-11 賃貸不動産の活用による納税資金対策

納税資金が不足なのでやむを得す銀行借入を考えています。担保としては相続した賃貸ビルがあります。
借入以外の方法もあるのでしょうか。

法人に賃貸ビルを一括貸しし、保証金を納税資金に充当する方法があります。個人の銀行借入の利息は経費となりませんが、法人は借入金の利息、が経費となります。

(1)相続税を納付するために個人で借りた借入金の利息は経費にならない

相続財産に現預金が少なく、不動産の割合が多い場合には、当然納税資金は不足することになります。この場合には、不動産を担保にして銀行からの借入金で相続税を納付するか、あるいは、相続税の延納を申請し、分割払いを選択することになります。
しかし、銀行からの借入をすれば、利息を支払わなければなりません。
また、延納にしても、利子税を支払う必要があります。この利息や利子税は、経費として取扱われませんので、個人の収入から相続税等を支払った手取りから生活費のほかに利息も支払わなくてはならないことになります。
借入金が無利息になるか、あるいは利子が経費として認められれば個人の負担は、大幅に軽減されるはずです。

(2)保証金を設定する

通常のテナントビルを入居者に賃貸する場合、保証金を預り、退去時に預った保証金を返還します。この場合の保証金と賃貸料の関係は、保証金を高く設定すれば賃貸料は安くなり、保証金を安く設定すれば賃貸料は高くなるというように密接な相関関係にあります。そこで、相続により取得した賃貸用不動産を、管理する管理会社を設立するか、あるいは既に設立しである法人ヘ一括で貸し付けすることにします。この場合の保証金は高めに設定し、賃貸料を安くします。法人は、保証金を支払うために銀行から借入をし、その返済は第三者(テナント入居者)からの賃貸収入を充当します。個人としては、法人から預った保証金を納税資金にあてることができます。また、オナ会社のため、保証金の返済の心配もないことになります。

保証金による納税資金対策のしくみ

03-11

(3)保証金を支払うために借入れた借入金の利息は法人の経費となる

法人は、個人から安く賃借した建物を第三者に高めに賃貸することにより、賃貸料収入を得ることができるので、この賃貸料を借入金の返済に充当することができます。したがって、個人(不動産所有者)へ保証金を支払うために借入れた借入金の利息も当然法人の経費となり、法人の利益の圧縮にもつながることになります。個人で相続税を納税するために借入れをすると、納税はできたとしても、その後の借入金の元金及び利息の返済は、かなりの負担となりますが、保証金を活用すると、個人の借入金が法人ヘ転嫁されることになり、納税資金が確保されることになるのです。

3-10 生命保険の活用(2) 相続対策と生命保険

いざという時の納税資金対策は、どのようにした良いでしょう。

相続の発生と同時に現金で支払われる生命保険の保険金を、納税資金として利用するのも一つの方法です。

(1)身近で大きな問題、相続税の納税資金

相続税は、被相続人が亡くなった日の翌日から10ヵ月以内に金銭一括納付をすることが原則になっていますので、相続人は、相続した財産または相続人自身の財産で納税資金を捻出しなければなりません。
そこで、相続が発生するとすぐに現金で支払われる死亡保険金は、相続税の納税資金にうってつけです。

(2)A院長のケース

A院長は、50歳前半の若さで亡くなりました。財産は、自宅と定期預金5,000万円です。自宅の相続税評価額は、5億円とします。相続人は、奥さんと子供2人ですと、相続税額は6,850万円にもなります。納税資金は、定期預金5,000万円しかありません。不足額については、借金をして支払うとか、延納制度の適用をうけて、原則として年利3.66%(相続財産の状況や基準金利により異なります)の利子税を払いながら年賦で支払うことになります。

(3)B院長のケース

B院長の場合、A院長と異なり定期預金5,000万円はありませんが、生命保険1億2,000万円に加入していました。相続財産の評価額が、A院長に比べ5,500万円多いため、相続税額も7,950万円となります。しかし、納税資金は生命保険金の1億2,000万円で充当でき、かつ、4,050万円手許に残すことができました。

生命保険を納税資金として利用する

(妻1人子供2人の場合)

A 院 長 B 院 長
相続発生時点の資産 自宅 5億円 5億円
預金 5,000万円
生命保険金 12,000万円
生命保険非課税 ▲1,500万円
合計 55,000万円 60,500万円
※相続税 6,850万円 7,950万円
納税と収支 預 金 5,000万円
受取生命保険金 12,000万円
相 続 税 ▲6,850万円 ▲7,950万円
差引収支 ▲1,850万円 4,050万円

※配偶者1/2軽減適用

このように、生命保険加入により、納税資金には、十分足りる金融資産を確保したことになります。
今後、いかに相続税を払うかが大問題となってきますが、簡単に現金化できる生命保険を最大限に利用するのもひとつの方法です。

3-9 生命保険の活用(1) 生命保険の基礎知識

生命保険の受取保険金にかかる税金の種類について教えてください。

右の図のように契約の仕方によって受取保険金にかかる税金は3種類に分類されます。

(1)保険金を妻(または子供)が受取り、非課税枠を使って相続税を支払うケース

院長が自分に保険を掛け、自分で保険料を支払い、死亡保険金の受取人を妻または子供等の相続人にする場合です。院長が生存中に保険料を支払い、保険金は相続人が受取るため、死亡保険金にかかる税金は相続税の対象となります。相続税の対象となる死亡保険金の場合、一定の非課税金額が定められています。

非課税金額=法定相続人の数×500万円

たとえば、死亡保険金5,000万円で相続人が3人であれば、5,000万円-1,500万円3,500万円が相続税の対象となるわけです。したがって、相続人が受けとる死亡保険金にはたいへんメリットがあります。

(2)子供を保険金の受取人とし妻が保険料を支払い、贈与税を支払うケース

院長が被保険者となり、妻が保険契約者となり、死亡保険金の受取りを子供にする場合です。妻が保険料を支払い、子供が死亡保険金をもらうもので、言いかえれば、院長の死亡に備え、妻が子供のために加入するといえますから、この死亡保険金にかかる税金は贈与税の対象となります。
この場合の贈与税は、受取保険金から贈与税の基礎控除額110万円を差し引いた額が、全額課税の対象となり、かつ贈与税は税率が高いので、税金を多額に納めることになります。したがって、このような契約になっている場合は、死亡保険金の受取人を早急に妻に変更したほうが良いでしょう。妻が受取る死亡保険金は、(3)のケースで説明するように、妻の所得税の対象となり、贈与税より税負担は軽減されます。

生命保険金に対する税金のしくみ

(被保険者死亡の場合)

被保険者 保険料負担者 受取人 課税関係 相続対策上の
メリット
(1)院長 院長 妻(子) 妻(子)に相続税
(2)院長 子に贈与税 X
(3)院長 妻に所得税(一時所得)

課税判断のポイント
(1)誰が保険料を支払うか
(2)誰が保険金(解約金)をもらうかが課税判断の基準となります。契約者名義が誰であるかは課税判断には関係ありません。

(3)妻が保険金の受取人となり、一時所得として課税されるケース

院長が被保険者ですが、妻が保険料を支払い、かつ死亡保険金の受取人も妻にするケースです。院長が死亡することにより死亡保険金は妻に支払われますが、この保険金にかかる税金は所得税の対象となり、一時所得として課税されます。
一時所得としての受取保険金に対する計算方法は、次のようになります。

所得金額 (受取保険金一払込保険料-50万円)×1/2

すなわち、受け取った保険金から支払った保険料を差し引き、その利益金から50万円を控除し、その残額の2分の1が所得金額となります。
以上、3つのケスに分けて説明しました。私たちは日ごろ生命保険に加入する際に、あまり深く考えずに契約していますが、思わぬところに落とし穴があり、多額の税金を払うことにもなりかねません。念のため、現在契約している生命保険について、再検討してみてはいかがでしょうか。

3-8 相当の地代方式の見直し

相当の地代方式の見直しについて教えてください。

(1)今までに移転した借地権と底地部分を交換します。
(2)相当の地代方式をとりやめ賃借部分について、新賃貸借契約を結びます。

(1)相当の地代方式の内容

個人所有の土地に会社が建物を建設する場合には、通常借地権に相当する権利金の支払をします。
その権利金の支払いにかえて、相当の地代を支払うことを相当の地代方式といいます。そこで、個人が所有する土地に医療法人が建物を建てた場合に、法人が個人に対して権利金のかわりに地代を支払うことで相続対策を行うことができます。
相当の地代というのは、土地の更地価格の概ね年6%以上の地代をいい、実務上の運用としては、更地価格は相続税評価額で計算してもよいこととされ、しかも過去3年間の平均額を使用しでもよいこととされています。
この相当の地代方式には、地代を3年に一度改定する方式と据え置く方式があります。3年に一度改定する方式では、土地価格の上昇に応じて地代も改定されるため、含み益部分が法人に移転することはありませんが、地代を据え置く方式によれば、土地価格の上昇に応じて含み益部分が借地権として法人に移転していくことになります。これを自然発生借地権といいます。
一方、地代を据え置く方式によりますと、逆に土地価格が下がった場合には、法人から個人に「高い地代」が支払われることになり、個人は高い所得税・住民税を負担することになります。
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(2)相当の地代方式の見直し

法人に移転した自然発生借地権と個人の底地権の等価交換をします(法人借地権の移転率を計算し、次にその割合で等価交換をします)。残った個人所有の土地について、無償返還の届出等をして、(相当の地代にくらべて低い賃料で済む)新賃貸借関係を結びます。これにより、個人側の税負担が軽くなることになります。

3-7 MS(メディカル・サービス)法人の設立対策

MS法人の活用による相続対策について教えてください。

(1)メデイカル・サービス法人(MS法人)は、医業関連業務の代行会社としての有用性があります。
(2)MS法人は、医業外業務についても業務を行うことができます。

(1)MS(メデイカル・サービス)法人の業務内容

MS法人は、医療法人とは異なり、一般の法人ですから、医療関連業務はもとより、その他の業務についても行うことができます。
個人開設の場合には、その医業経費の内容のうち、とりまとめて処理したほうが有効な業務について、MS法人に業務委託することになります。
たとえば、医業用消耗品、材料の比率が高い診療所等にあっては、MS法人でそれらの材料等を一括購入することによって、集中購買による利益を生み出すことができ、または、機械設備投資が多額の診療所等にあっては、MS法人が機械のリース事業を行うことにより、設備投資支出を平均化することもできます。
このような業務により、生み出されたMS法人の付加価値はMS法人の利益になることにより、結果的に個人所得がMS法人に移転していくことになります。また、MS法人は医療以外の業務も行えるため、個人医業以外の不動産の管理等、資産管理会社的役割を担う場合もあります。さらに、MS法人に利益蓄積がされて財務体力がついた場合には、個人資産の買い取りを行う受皿にもなり得ます。

(2)MS法人の相続対策

MS法人を相続対策の観点から考えた場合には、個人資産の管理、および資産の移転先としての意昧が強くなります。資産の買い取りの場合には、MS法人の財務体力によりますが、個人所有であった医療用資産を買い取って賃貸方式に転換する方法や、医療法人では買い取りが困難となる個人の賃貸不動産についても、MS法人において買い取れる場合があります。
MS法人の活用については、第1に医業関連業務をMS法人に移管して、財務体力を蓄えた後に、個人資産の買い取りへと進むことが、より効果的な相続対策となります。
また、将来の相続を見据えて、MS法人の出資者をご子息などにすることで、MS法人の株式を院長の相続財産としないようにすることも相続対策のひとつといえます。

MS法人の設立対策

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3-6 医療法人の設立対策

相続対策としての医療法人設立について教えてください。

(1)後継者が出資持分を多く持つ持分の定めのある医療法人・出資額限度法人が設立されている場合、医業用資産を法人に移転することが重要です。
(2)平成19年4月1日以後設立される医療法人(基金拠出裂法人)の場合は、法人に資金・資産が蓄積されでも相続財産は増加しません。

(1)医療法人の設立と相続対策

医療法人の制度は、医業の継続性を前提とした制度です。そこで相続対策の観点からは、後継者の決定が前提としてあり、そのうえで、医業の継続について検討していくことになります。
個人開設の場合には、個人のすべての収入・支出が個人に帰属し、医業所得に対しての所得税差し引き後の資金の蓄積分、および医業資産も含んだ個人資産・負債のすべてが相続財産となり、将来の相続税の対象となります。
これに対して、医療法人の場合には医業収入・支出は医療法人に帰属し、設立時の資産、負債および設立後に発生する医業利益は、医療法人の所有となります。院長に対しての理事長報酬を支払った後の利益について法人税が課税され、税引後の資金は医療法人に蓄積されます。その蓄積された資金により、医療用資産の購入がなされることになります。
この医療法人の資産、負債については、持分の定めのある医療法人・出資額限度法人の場合、医療法人の出資持分を個人が所有することによる間接所有となります。したがって、個人財産としては、医療法人の出資持分が財産ということになります。
また、平成19年4月1日以後設立が強制される基金拠出型法人は、持分の定めのない医療法人となりますので、従来の医療法人とは相続税への影響が異なります。

(2)持分の定めのある医療法人・出資額限度法人の出資持分の所有者

医療法人の資産は、その出資持分により間接所有されることとなります。したがって将来の相続を考えると、できるだけより多くの出資持分を後継者が所有することがポイントとなります。ですから、出資持分の評価引き下げを行い、順次後継者に移転していくことが重要です。
医療法人の出資持分の移転が完了した後には、可能なかぎり医業資産は医療法人に移転し、個人資産の組み替えを図ることが重要です。

(3)基金拠出型法人の拠出金の所有者

基金拠出型法人の場合、拠出された基金しか払い戻しがされない形態ですので、拠出金だけが相続財産であり、医療法人に資金・資産が蓄積しでも相続財産は増えないと考えられます。ただし、法人が解散した場合には、蓄積した資金等は固などヘ帰属することとなりますので、注意が必要です。

医療法人の設立対策

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3-5 賃貸不動産の購入

賃貸用不動産を購入すると相続対策になりますか。

不動産の実際の売買価格より相続税評価額の方が低いため、不動産を購入すれば、借入金と相続税評価額との差額相当額だけ、全体の相続財産を引下げる効果があります。

(1)時価と相続税評価額とは必ずしも一致しない

相続財産の評価額は、種類により評価方法が異なり、結果として、実際の価値と、相続税評価額が必ずしも一致しません。
たとえば、現金は、実際の価額がそのまま評価額になりますが、賃貸用不動産の評価は各種評価減の規定があるために、現実には購入価額より相続税評価額が低くなります。

(2)賃貸用不動産の購入で、相続税評価額を下げる

たとえば、現金預金10億円所有しているケースと、現金預金残6億円(3億円分を土地の購入そして1億円を建物の購入にあてた)、土地3億円分(購入価額時価路線価とします)、建物1億円分を所有しているケースを比べます。
→土地建物は貸付用に利用
現金預金10億円所有のケスは、相続税の評価額はそのまま、10億円になります。しかし、後者のケースでは、
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※建物の固定資産税評価額は取得価額の60%として計算してあります。

よって評価額は、10億円から8.79億円つまり1.21億円の減額になります。このケースは自己資金を使用していますが、借入をしても同じ効果が生まれます。
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3-4 土地の利用形態の変更

自宅の敷地の一部に貸家を建てようと思いますが、相続対策になるものがあれば教えてください。

宅地は利用単位となる一区画の宅地ごとによって評価をします。ですから、敷地の利用の仕方によっては、相続税法上の土地の評価を下げることができます。

(1)宅地の評価単位

宅地は、利用の単位となる一区画の宅地ごとに評価します。必ずしも一筆ごとに評価するのではありません。
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(2)自宅の敷地に貸家を建てる場合の評価

(イ)現況(全面積が自用とされかつ、路線価は二方路線の影響をうけ高くなります)
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(ロ)路線価の低い方に貸家を建てるケース
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(ハ)路線価の高い方に貸家を建てるケース
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※小規模宅地等の評価減は考慮しておりません。

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前提条件 ◎ 奥行補正率20m、l0mともに1.00
      ◎ 二方路線加算率 0.03
      ◎ 借地権割合 0.7
      ◎ 借家権割合 0.3
      ◎ 自宅の建付面積貸家の建付面積

このように、建て方によって評価が異なってきます。また以下のようにしても、形が縦長になる等で、評価方法は変わってきます。
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しかし、自宅の敷地に貸家を建てる等については相続税評価のみならず、その利便性、日当り等も考慮する必要がでてきます。

3-3 医院の建設

現在更地の土地に医院を建てる場合、名義は誰にするのが有利ですか。

院長の名義で医院を建設すると、土地の相続税評価額を現在の5分の1にまで引き下げることができます。

(1)医院を建てると土地の評価額は大幅に下がる

医院を建設することによって、土地の評価額がどのように下がっていくかをまとめたのが右の表です。
現在院長が所有している土地は、更地のままで何も利用していない状態ですので、土地の評価額は「路線価×地積=150万円×400平方メートル=6億円」となり、相続税評価額としては、最も高い評価になっています。この場合、相続人を子供1人と仮定して、改正後の相続税を試算すると2億4,000万円もの相続税を納付しなければならないことになります。
そこで、この土地に、借入金2億円で院長名義の医院を建設し、医院として事業を開始した場合には、院長の土地は事業用の土地ということになり、相続でその土地を取得した親族が相続税の申告期限までにその事業を承継し、申告期限までその事業を営むことを条件に、「特定事業用の小規模宅地の評価減」の適用を受けることができます。(1-5参照)小規模宅地の評価減では、特定事業用の土地のうち400ばまでについては、更地評価額の80%の評価減が可能となりますので、土地の評価額は、更地の時の評価額の2割ですみます。
したがって、更地の評価額「6億円Jから小規模宅地の評価減「6億円×80%=4億8,000万円」を差し引いた1億2,000万円が、医院を建設した場合の評価額となります。この場合も同様に改正後の相続税を試算すると、納税額は40万円となり、医院を建設することによって、納めるべき相続税が2億3,960万円も少なくなるので、相続対策として大きな効果を得ることができます。

特定事業用小規模宅地の評価減による節税の一例

[前提条件]路線価150万円/平方メートル 地積400平方メートル

  現状(更地) 特定事業用宅地
更地の評価額小規 6億円 6億円
小規模宅地の評価減 ▲4億8,000万円
建物の評価額 1億2,000万円
借入金 ▲2億円
相続財産の合計 6億円 4,000万円
相続税額 2億4,000万円 40万円
節税効果 ▲2億3,960万円

(2)ご子息名義で医院を建築する場合

ご子息が医院を建築した場合にも、一定の場合には(1)と同様に80%の評価減を取ることができます。
例えば、院長の所有している土地に次期後継者を予定しているご子息が医院を建築して無償で貸して、院長の事業の用に供している場合においては、≪1≫相続でそのご子息が院長の事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ営んでいること、≪2≫申告期限までに土地を保有していること、を要件に、更地評価額の80%の評価減が可能となります。
ただし、このような場合、ご子息に建設費が負担できるだけの経済力があることを証明し、資金の出所を明確にしておくことが重要となります。
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3-2 相続対策の考え方と進め方

医療相続対策の考え方、進め方について教えてください。

(1)医療相続対策は、後継者の決去と相続対策の実行が重要です。
(2)相続対策は、財産評価引下げ→移転→納税資金対策という順序で進めます。

(1)後継者の決定

医療相続を考える場合、後継者の決定が重要です。
医業については、原則としてその後継者は医師・歯科医師に限られます。個人開設の場合には院長、医療法人開設の場合には医療法人の理事長となるわけですが、現行の制度上は、原則として医師・歯科医師であることが条件です。したがって、他の業種以上に医業の場合には、後継者の決定が重要となります。

(2)相続対策の進め方

相続対策は、3つのポイントがあります。
第1は、財産評価引き下げ対策です。
現状の財産構成の組み替え、利用形態の変更等を実行しながら、全体の財産評価引き下げを図ります。
第2は、財産移転対策です。
将来、評価アップが見込まれる資産についての生前贈与や、医療法人出資持分の贈与、個人資産の売却等により、相続人への移転を図ります。
第3は、納税資金対策です。
相続税の支払が可能になるように、現金預金への資産の一部組み替え、または、生命保険の活用による納税資金対策等により、納税資金の準備をすることです。
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以上の3つのポイントを検討することにより、バランスのとれた医業相続対策となります。
また、対策を実施する場合には、経済・金融環境及び税制に留意しながら進めることが必要です。その点から対策実行についてのタイミングの決定が重要となります。

(3)対策実行後のフォローアップ

相続対策について、計画通り実行された場合にあっても、その後のフォローアップが重要となります。
特に、最近の相続税制の改正を考えますと、対策実行後、相続対策の見直し、フォローアップに留意することが重要です。

3-1 医療法人の相続

医療法人の相続について教えてください。

(1)医療法人の所有する土地・建物・医療設備等は、法入所有財産です。
(2)相続の対象となるのは、医療法人の出資持分になります。(平成19年4月以降設立法人は基金となります。)

(1)個人事業の場合の医療相続

個人で、診療所・病院を開設されている場合には、医療財産も、その他個人財産も、相続税の課税対象となります。
したがって、医療財産については、医業を後継する相続人が引継ぎ、その他個人財産については通常の相続によるということになります。
この場合に、納税のために医療財産の一部(診療所の土地・建物等)を売却しなければならないような場合には、後継者の方が医療を継続する場合の障害となります。

(2)医療法人の場合の医療相続

医療法人で診療所・病院を開設されている場合には、医療財産は法人所有ですから、相続の対象となるのは持分の定めのある医療法人の出資持分とその他個人財産ということになります。
≪1≫持分の定めのある医療法人
一般の会社の株式に相当するものですから、その全額が相続の対象となるのではなく、被相続人の持分だけです。医療法人の出資持分について、相続税の規定により評価し、持分割合を乗じた金額が相続税の対象となります。一般的には、設立後の年数が長期となっており、医療法人の所有する土地等の含み益が多額な場合や、利益の蓄積が多額な場合には、出資持分の評価が高額になるので注意が必要です。また、将来の相続を考えた場合には、医療法人の出資持分について、早期に後継者に移転するなどの検討が必要でしょう。
≪2≫持分の定めのない医療法人(基金拠出型法人)
基金の所有者に相続が起こった場合の具体的な評価の方法は示されていません。しかし、基金は財産の種類としては債権ですから、基金は元本の価額で評価します。
なお、持分の定めのある医療法人から基金拠出型法人への移行に際しては、個人に対してはみなし配当課税が、医療法人に対しては贈与税又は相続税が課税される場合があります。

持分の定めのある医療法人については毎年蓄積される利益が出資持分に反映され、相続税の課税対象が大きくなることが多いことから、将来の相続を見据え、長期的な対策が必要となります。

[対策]
→出資持分の評価の引下げを図る
→早期に後継者に出資持分の移転を図る
→納税資金の確保を図る

コラム2

そもそも「贈与」とは何だろう?

1.「贈与」を正しく理解しよう

そもそも贈与とはどのようなことをいうのでしょうか。無償で財産を渡す、当たり前のことかもしれません。しかし贈与を正しく理解していないと思わぬところで税務当局から「実は贈与は成立していなかった」と指摘されるケスもあります。たとえば「名義預金」はその代表例といえます。子供名義の口座にお金を移したものの、子供はそのことをまったく知らず、口座自体も親が管理してい
るような場合には、たとえ親の意思で子供にお金をあげたという認識でいてもそのお金は実質的に親のものとされてしまいます。これでは相続対策をしたつもりがまったく効果がなかったことになってしまいます。

2.「贈与」は民法で定められている

「贈与」は民法549条で次のように定められています。
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」
条文によると、当事者の双方が意思を表示し意思が合致することにより贈与が成立するとあるため、書面によって贈与契約を締結した場合には契約時に贈与が成立することになります。また、贈与は必ず’しも書面が必要というわけではなく口頭でも成立しますが、書面によらない贈与の場合には現実に財産を引き渡した等のタイミングで贈与が成立することになります。

3.税務当局に否認されないI贈与」とは

税務当局に否認されない贈与の成立は次の3つのポイントが重要となります。

(1)「あげた」という贈与側の意思表示があること。
(2)「もらった」という受贈側の受諾認識があること。
(3)もらった人がその財産を自ら利用、運用、管理している実績があること。

以上の3点については後目立証できることが重要となります。たとえば立証できる形跡として次のようなことがポイントになります。

・頚貯金等

→口座開設書類等には名義人本人が自署しているか。名義人本人が住所・氏名変更手続きや自ら出金した実績があるか。預金通帳・印鑑を名義人本人が保管しているか。

・上場株、投資信託等

→買付・売付の実際の指図人は誰か。配当金の実際の受取人は誰か。

・全財産共通

→贈与契約書を作成し自署押印しているか。贈与税の申告をし、自ら贈与税を納付しているか。

2-7 民法との接点

相続時精算課税制度が民法に与える影響として、具体的にはどのようなことが考えられますか?

財産の評価時期及び評価額に影響します。
(1)相続時精算課税は贈与時の評価
(2)民法の特別受益と遺留分の対象となる財産は相続開始時の評価

(1)民法上の特別受益

相続人の相続分につきましては、被相続人のその相続開始時の財産をベスに各相続分を算定することが原則です。しかし、もし相続人の中に、生前に被相続人から多額の贈与を受けていた人がいる場合に、その生前贈与分を相続財産に加算して相続財産の分割をしませんと公平で、はないことになります。

(2)民法上の遺留分

自己の財産は、生前も死後も自由に処分することができます。しかし、たとえば被相続人が遺言等で自分の財産を全て全くの第三者に遺贈した場合には、その相続人はその後の生活に困ってしまいます。
そこで、相続人の最低限度の生活保障と言う観点から、本来相続できる相続分の一定額までは遺留分として、その相続人が取得する権利があります。
その遺留分は右記の通りです。
その具体的な権利を遺留分減殺請求権といい、遺留分権利者が相続の開始や減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った日から1年以内にこの請求をしませんと時効により消滅します。

(3)評価における注意点

民法上の特別受益と遺留分の財産の評価時期は、実務的には相続開始時となりますが、相続時精算課税制度による贈与を受けた場合には、その贈与時となります。従って、民法と相続税法ではその評価時期が違うので、贈与時と相続時の時価に大きく差がある場合には、その調整が難しくなる場合があります。

遺留分の割合
民法では、相続人に相続分という基本的な財産の分配割合を決めています。配偶者以外の相続人(子供や父母・兄弟姉妹)が2人以上いる場合には、配偶者以外の人数で相続分を割ることになります。
そして、遺留分についても決まっています。基本的には、相続分の割合の2分の1が遺留分の割合になります。
(例外もあります。)

相続人 配偶者のみ 配偶者と子供 配偶者と父母 配偶者と兄弟姉妹 父母のみ
配偶者 子供 配偶者 車見 配偶者 兄弟姉妹
相続分 1 1/2 1/2 2/3 1/3 3/4 1/4 1
遺留分 1/2 1/4 1/4 1/3 1/6 1/2 1/3

たとえば、平成25年の贈与時のその財産の評価額は1億円であったが、平成34年の相続開始時は2億円となっていたケースや、その逆に贈与時は2億円であったが、相続時は1億円となっていたケースが考えられます。
ですから、この相続時精算課税制度を活用する場合には、必ず民法上の特別受益と遺留分を考慮にいれて検討する必要があります。

区分 項目 評価基準等
相続 相続時精算課税制度による贈与 贈与時の税法評価額
民法 特別受益・遺留分 相続開始時の時価相当

2-6 時価の影響

相続時間税制聞い生棚与した後にその財産が値上がり、または値下がりした場合にはどのようになりますか?教えてください。

下記のように、値上がりした場合には得をしますが、値下がりした場合には損をするケースもあります。従って、川今後はこの制度を活用するかどうかを充分に検討する必!要があります。

(1)生前贈与した財産が値上がりして得をしたケース

相続人子供2人で相続財産が5億円であることを前提にお話をすすめます。この場合、5億円に対する現状の相続税は1億3,800万円となります。この5億円のうち2億円部分を相続時精算課税制度により生前贈与する場合の贈与税は、3,500万円となります。この2億円の財産が将来1億円値上がりして3億円になっていたらどうなるのでしょうか?(この財産以外は価格変動がないものとします)。
もしこの財産を生前贈与していなければ、5億円の財産が6億円となりますので、その相続税は1億3,800万円ではなく、1億7,800万円を支払わなければなりませんでした。生前贈与してその値上がりした部分は子供に移転しますので、結果としてこの被相続人の相続財産は5億円に固定化されて、4,000万円の得をしたことになります。

(2)生前贈与した財産が値下がりして損をしたケース

この場合には、逆に生前贈与したことによりに損をすることになります。つまり、現状では5億円の相続財産に1億3,800万円の相続税がかかりますが、その何年か後には1億円値下がりしますので、相続財産は4億円となります。この場合の相続税は9,800万円でありますので、先に生前贈与いたしますと本来9,800万円でよかった相続税が、結果として1億3,800万円となり、4,000万円も多く相続税を支払うことになります。

(3)結論

従って、今後株式公開をするため値上がりが予定されている株式等のような成長財産はこの制度で早めに贈与するのが賢明ですが、値下がりが予想される財産は充分な検討が必要です。たとえば、値下がりが予想されても、毎年大きな賃貸収益を産むような高収益物件は早めに贈与しておいた方がいい場合もあります。

値上がり・値下がりで有利・不利となる例

く相続財産5億円,子供2人〉
1.相続時精算課税制度で生前贈与した財産が値上がりしたケース

(1)現状の相続税
5億円→1億3,800万円・・・(A)
(2)生前に2億円を贈与する
贈与税:(2億円‐2,500万円)×20%=3,500万円→相続税額から控除
(3)贈与財産が1億円値上がり3億円に!
(4)相続時の相続財産の評価額は?
3億円+2億円(贈与財産)=5億円
相続税:1憶3,800万円ム3500万円(生前贈与分)=1憶300万円
(5)納税額合計:(2)+(4)=1億3,800万円
(6)生前贈与しなかったら?相続財産の評価額=6億円
相続税:1億7,800万円・・・(B)
(7)(A)‐(B)=▲4,000万円 メリット

2.相続時精算課税制度で生前贈与した財産が値下がりしたケース
(1)現状の相続税
5億円→1億3,800万円・・・(A)
(2)生前に2億円を贈与する
贈与税:(2億円-2,500万円)×20%=3,500万円→相続税額から控除
(3)贈与財産が1億円値下がり1億円に!
(4)相続時の相続財産の評価額は?
3億円+2億円(贈与財産)=5億円
相続税:1億3,800万円 ▲3,500万円(生前贈与分)=1億300万円
(5)納税額合計:(2)+(4)=1憶3,800万円
(6)生前贈与しなかったら?
相続財産の評価額=4億円
相続税:9,800万円・・・(B)
(7)(A)‐(B)=▲4,000万円 デメリット

2-5 活用方法

「相続時精算課税制度」は具体的にどのように活用することができるのでしょうか。

相続時精算課税制度の活用事例として、次のようなものが考えられます。
(1)お子さまの住宅ローンを肩代わりする場合
(2)賃貸物件をお子さまに移転する場合
(3)事業承継を行う場合
(4)ぺイオフ対策を実施する場合

(1)お子さまの住宅ローンを肩代わりする場合

相続時精算課税制度を選択した場合には、肩代わりしたローン金額のうち2,500万円までが非課税となり、それを超える部分の金額については20%の贈与税が課せられます。一方、現行の贈与税暦年課税制度のもとで贈与税の負担なしにお子さまのローンを肩代わりしようとした場合には、110万円の非課税枠を利用して複数年に渡って贈与をすることになります。従って、相続時精算課税制度を選択した場合には、複数年贈与の手聞が省かれるだけでなく、一括返済することによりそれ以後の利息の負担がなくなるメリットがあります。
なお、相続時精算課税制度を選択した場合には肩代わりしたローン金額の全額が相続財産に合計されますので、実際にどちらが有利であるかは相続税額の負担額も含めて検討する必要があります。

(2)賃貸物件をお子さまに移転する場合

多額の賃貸収入がある場合に、相続時精算課税制度を選択して賃貸物件をお子さまに移転することにより、現行の贈与税暦年課税制度の場合と比較して低い贈与税額の負担で賃貸物件を移転することができます。
この贈与により、賃貸物件だけでなく賃貸収入もお子さまに移転しますので、所得が親子で分散され所得税の軽減が図られるとともに、お子さまが所得を蓄財することで相続税の支払い原資を確保することができます。

例:年間の不動産所得が1,750万円と850万円である2物件を所有しており、そのうちの1物件をお子様に贈与した場合
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(3)事業承継を行う場合(持分の定めのある医療法人の場合)

相続時精算課税制度を選択し、事業を承継させたいお子さま以外のお子さまには金銭等を贈与して遺留分を放棄させ、かつ、遺言書を作成します。また、同じく相続時精算課税制度を利用して、事業を承継させたいお子さまには出資持分を贈与します。
このように、相続時精算課税制度を選択した贈与により、理事長・院長の意思のもとに生前に後継者を確定し事業承継を完了させ、相続発生後の事業承継トラブルを回避することができます。

(4)ぺイオフ対策を実施する場合

相続時精算課税制度を選択した場合には、お子さま1人につき1回の贈与で1,000万円を分散させることができます。1000万円ずつの分散ですので、贈与税は非課税となります。

2-4 住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例

「住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例」について、内容を教えてください。

(1)住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例の適用対象者は、贈与者は毅(年齢制限なし)、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属であれば対象となります。年齢の判定は、その年の1月1日現在で判定します。
(2)住宅取得等資金の贈与税の非課税制度を併用した場合、特別控除額の2,500万円に加え、非課税となる金額が平成!25年は一般住宅の場合700万円、良質な住宅用家屋の場合1,200万円あります。
(3)住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例は、平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間に贈与により取得した住宅取得等資金について適用されます。

(1)贈与財産が住宅取得等資金である場合

贈与者である親の年齢に関らず相続時精算課税制度を選択することができます。また、住宅取得等資金の非課税制度を併用した場合の非課税枠は次のとおりとなります。

平成25年 平成26年
良質な住宅用家屋の場合 1,200万円 1,000万円
(東日本大震災の被災者の場合) (1,500万円) (1,500万円)
一般住宅(上記以外)ーの場合 700万円 500万円
(東日本大震災の被災者の場合) (1,000万円) (1,000万円)

(2)ー適用対象者

住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例の適用対象者は、贈与者は親(年齢制限なし)、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属であるものが対象です。また、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度を併用する場合には、これに加え合計所得金額が2000万円以下であることが条件です。各年齢の判定は、その年の1月1日現在で判定します。

(3)適用要件

≪1≫受贈者が取得した住宅取得等資金を、取得した年の翌年3月15日までに、自己の居住の用に供する一定の家屋の取得文は自己の居住の用に供する家屋の一定の増改築の費用に充てること。
イ)取得の場合、床面積50ぱ以上240平方メートル※1以下で既存住宅の場合には耐火建築で築25年以内約、非耐火建築で築20年以内※3
ロ)増改築の場合、増改築後の床面積50平方メートル以上240平方メートル※1以下で工事費用が
100万円以上
※l非課税制度併用の場合
築25年超のものについては新耐震基準を満たすもの
制築20年超のものについては新耐震基準を満たすもの
≪2≫≪1≫により取得又は増改築等した家屋を、同日までに自己の居住の用に供すること、または同日後遅滞なく自己の居住の用に供すると見込まれること。

(4)適用手続

この規定の適用を受けようとする場合には、受贈者がその贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの聞に、税務署長に対して相続時精算課税選択の届出をし、かつ一定の書類を提出しなければなりません。

(5)税額の計算

贈与税の非課税枠を超える部分は、一律20%の税率で課税されます。

住宅取得等資金の相続時精算課税制度選択の特例と非課税制度(平成25年)

02-04

(1)暦年課税 (2)相続時精算課税制度 (3)相続時精算課税制度選択の特例 (4)住宅取得等資金の非課税制度
控除適用枠 基礎控除
110万円まで
特別控除2,500万円まで 非課税枠 1,200万円又は700万円(平成25年)
(平成26年は1,000万円又は500万円)
贈与者 制限なし
(年齢65歳以上)

(年齢制限なし)
親・祖父母などの直系尊属 (年齢制限なし)
受贈者 制限なし 贈与年1月1日時点で20歳以上の推定相続人である子
(子が亡くなっている場合は孫)
贈与年1月1日時点で20歳以上の子・孫等の直系卑属(合計所得金額2,000万円以下)
贈与財産 制限なし 制限なし 新築住宅、中古住宅の資金
-対象物件の床面積は50平方メートル以上(非課税制度の場合は50平方メートル以上240平方メートル以下のもの。上限240平方メートルは震災被災者は除く。)
-店舗併用住宅は1/2以上が住宅
-耐火建築物は築25年以内、それ以外は築20年以内増改築の資金
-対象物件の床面積は50平方メートル以上(非課税制度の場合は50平方メートル以上240平方メートル以下のもの。上限240rriは震災被災者は除く。)
-工事費用100万円以上
・店舗併用住宅は1/2以上が住宅
・居住用部分の工事費用が全体の1/2以上
税率 基礎控除枠超える
部分に対して
累進課税
(10%50%)
特別控除枠2,500万円を超える部分に対して一律20% 単独適用の場合は基礎控除+
非諜税枠を超える部分に対して累進課税
(1)と併用の場合は特別控除枠+非課税枠を超える部分に対して一律20%
贈与税の申告 税額が出る
場合は必要
税額が出なくても必要
併用関係 (4)との併用可 (4)との併用可 (1)、(3)と併用可

2-3 現行制度との比較

現行の贈与税暦年課税制度と相続時精算課税制度のメリット・デメリッ卜を教えてください。

(1)暦年課税制度
メリット:基礎控除の110万円を毎年活用でき、相続開始前3年超の贈与財産は相続財産に加算されない。
デメリット:贈与金額によって最高50%(平成27年1月1日以後の贈与については55%)ーの税率が適用される。(税率が高い。)
(2)相続時精算課税制度
メリット:生前贈与の非課税枠2,500万円を超えた部分も一律20%の税率で済むので、マンションなどの収益物件を贈与すれば早くに子に収益を移転出来る。また、相続時に合算される価額は贈与時の価額であるため、将来値上がりが確実な資産には有効。
デメリット:贈与財産は相続財産に合算される。暦年課税秘度に戻ることができない。

(1)適用対象者

≪1≫暦年課税制度は適用対象者の制限はありません。
≪2≫相続時精算課税制度の適用対象者は、贈与者は65歳以上(平成27年1月1日以後の贈与については60歳以上)の親、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属である子供(平成27年1月1日以後の贈与については「孫」を追加)です。なお、各年齢は、贈与のあった年の1月1日現在で判定します。

(2)届出

≪1≫暦年課税制度は届出の必要はありません。
≪2≫相続時精算課税制度は届出が必要です。受贈者である兄弟姉妹が別々に、贈与者である父母ごとに選択することが可能です。相続時精算課税制度を選択した場合、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。(一度相続時精算課税制度を選択してしまうと暦年課税制度を使うことができなくなってしまいます。)

(3)非課税枠

≪1≫暦年課税制度は毎年110万円の基礎控除があります。
≪2≫相続時精算課税制度は2,500万円の特別控除があります(2,500万円を限度に限度額まで複数回使用可)

(4)税率

≪1≫暦年課税制度は10%から50%(平成27年1月1日以後の贈与については55%)の超過累進税率で課税されます。
≪2≫相続時精算課税制度は2500万円を超えた部分に対して一律20%で課税されます。

(5)相続時の精算

≪1≫暦年課税制度の贈与財産は相続開始前3年以内のもののみが相続財産に加算されます。ただし、加算された贈与財産に係る贈与税は相続税から控除できます。(還付はありません。)
≪2≫相続時精算課税制度の贈与財産は全額相続財産に加算されます(相続税の課税対象になります)。ただし、すで、に支払った相続時精算課税制度に係る贈与税額は相続税額から控除できます。相続税額から控除しきれない贈与税額については還付を受けられます。
※相続財産に加算される価額は、≪1≫、≪2≫ともに贈与時の価額です。

贈与税暦年課税制度と相続時精算課税制度

→相続時精算課税制度を選択した場合には、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。

①暦年課税 ②相続時精算課税制度
控験適用枠 基礎控除
110万円まで(毎年適用できる)
特別控除2,500万円まで
(限度額に達するまで控除でき、限度額を超える部分については一律20%課税される)
贈与者 制限なし
(平成27年1月1日以後、祖父母、父母から20歳以上の子、孫に対しての贈与の場合には税率の優遇あり。)
親(年齢65歳以上、父母ごと、兄弟姉妹ごとに選択)
(平成27年1月1日以後贈与の場合は年齢60歳以上)
受贈者 制限なし
(平成27年1月1日以後、祖父母、父母から20歳以上の子、孫に対しての贈与の場合には税率の優遇あり。)
20歳以上の推定相続人である子
(平成27年1月1日以後贈与の場合は20歳以上の孫を追加)
贈与財産 制限なし 制限なし
税家 基礎控除額を超える部分に対して累進課税(10%50%)
(平成27年1月1日以後贈与については、10%55%)
特別控除枠2,500万円を超える部分に対して一律20%
贈与税の申告 税額が出る場合は必要 税額が出なくても必要
相続税との関係 贈与後3年経過すれば相続時に相続財産に含めなくてよい 相続時に、贈与財産を相続財産に持ち戻して相続税を計算する
(孫に対する贈与については相続時に2割増しで相続税を計算)

2-2 相続時精算課税制度の具体例

「相続時間税制度」を利用した場合贈与をした時・相続が起こった時には、具体的にどのように税金は計算されますか。

(1)贈与の時点では、「相続時精算課税寄せ度Jを選択してその贈与財産から非課税枠の2500万円を差し引いて、非課税枠を超える部分に20%で課税されます。
(2)棉続時には、「相続発生時の相続財産」および「剥度選択後の贈与財産」を合算したもので相続税を計算し、ここから贈与時に支払った贈与税を控除します。

計算の概要は上記のようになりますが、より具体的に見てみましょう。現在院長が財産を1億円持ち、相続人は妻と後継者の子供の2人とします。

(1)「相続時精算課税制度」を利用した贈与時

平成25年に院長は、財産のうち1,500万円分を子供に贈与することとしました。このとき相続時精算課税制度を選択し、申告した場合、非課税枠の2,500万円のうち1,500万円を控除します。すると平成25年の課税対象額はO円となり、贈与税額も0円となります。
さらに、平成26年にも3,000万円分を贈与することとしました。相続時精算課税制度は、一度選択すると相続が発生するまで当事者間の贈与全てに適用されます。ですから、平成26年の贈与もこの制度の枠内で行われることとなります。したがって平成26年の贈与税の計算は、贈与額3,000万円から非課税枠の残額1,000万円を控除した、2,000万円に対して税率20%で課税され、贈与税額は400万円となります。

(2)相続発生時

平成26年から4年後、平成30年に院長が亡くなり、相続が発生しました。相続時において院長が所有していた相続財産は贈与後の残額5,500万円です。しかし、相続時精算課税制度を選択していますので、制度選択後の贈与財産も相続財産として合算されます。つまり相続税課税対象額は、生前贈与分の4,500万円と院長所有の相続財産5,500万円、あわせて1億円ということになります。もし子が相続する財産が生前贈与分をあわせて5,000万円であるとすると、相続税額は385万円になります。しかし、生前贈与にかかわる贈与税額がすでに支払われていますので、これを相続税額から控除します。
支払った贈与税額は400万円ですので、相続税額385万円から400万円を引くとマイナス15万円、つまり15万円が還付されることとなります(この還付金には還付加算金もつきます)。

【図相続税精算課税制度の適用例】

02-02

2-1 相続時精算課税制度の概要

「相続時精算課税制度」について、内容を教えてください。

(1)平成15年度改正により贈与税暦年課税制度(相続と区分して毎年110万円の基礎控除)に加えて、相続時精算課税制度が選択制で創設されました。
(2)相続時精算課税制度の適用対象者は、贈与者は65歳以上の親(平成27年1月1日以後の贈与については60歳以上)、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属である子供(平成27年1月18以後の贈与については20歳以上の孫を追加)です。なお、年齢は、その年の1月1日現在で判定します。
(3)相続時精算課税制度は2,500万円までは贈与税非課税、超過部分は一律20%の税率で課税されます。

(1)相続時精算課税制度は選択制

相続時精算課税制度は、贈与税暦年課税制度(相続と区分して毎年110万円の基礎控除)との選択制です。
≪1≫受贈者である兄弟姉妹が別々に、贈与者である父母ごとに選択可能です。
≪2≫相続時精算課税制度を選択した場合、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。つまり、一度選択したら取りやめはできません。

(2)適用対象者

≪1≫相続時精算課税制度の適用対象者は、贈与者は65歳以上(平成27年1月1日以後の贈与については60歳以上)ーの親、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属である子供(平成27年1月1日以後の贈与については20歳以上の孫を追加)が対象です。各年齢は、その年の1月1日現在で判定します。
≪2≫人数の制限はありません。

(3)適用手続

相続時精算課税制度を選択する受贈者は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの聞に納税地の所轄税務署長に対してその旨の届出書を提出します。

(4)適用対象財産等

相続時精算課税制度の適用にあたって、贈与財産の種類、贈与金額、贈与回数の制限はありません。

(5)税額の計算等

≪1≫贈与税額の計算
2,500万円までは贈与税非課税、超過部分は一律20%の税率で課税されます。
≪2≫相続税額の計算等
贈与者の相続時に、相続時精算課税制度の適用以後の贈与により取得した財産の贈与時における価額と相続財産の価額を合計し相続税を計算し、すでに支払った相続時精算課税制度に係る贈与税額を控除して計算します。相続税額から控除しきれない贈与税額は還付を受けられます。ただし、平成27年1月1日以後の贈与について孫を対象として贈与した場合には、合計して計算する相続税額は2割増しで計算します。

相続時精算課税制度の対象の拡充

相続時精算課税制度:生前贈与の非課税枠2,500万円を超える部分に一律20%贈与税課税
贈与財産は相続時に贈与時の価額で相続財産に合算
02-01

コラム1

財産の分割方法は時代を動かす?~鎌倉時代から現代までの分割方法

1.現代は「法定相続」

現代日本の相続法において、財産の分割については「法定相続」という考え方があります。相続により財産をどのように分けるかは基本的には相続人の自由ですが、話がまとまらなかったりした場合には法定分割で分けた「法定相続分」により財産を承継します。このf法定相続分Jは戦後に民法によって定められています。(現行民法は昭和56年)
では、過去の日本においてはどのような分割方法があったのでしょうか。

例)配偶者、子3人の場合=今配偶者(1/2)、子A(1/6)、子B(1/6)、子c(1/6)

2.鎌倉時代は「分割相続」

鎌倉時代は武士階級が勃興した時代ですが、この時代の財産の分割方法としては「分割相続」という制度がありました。「分割相続」とは、一族の惣領(家長)が相続人全員に均等に財産を分割する方法のことをいいます。ここで言う「相続Jとは生前の相続、つまり贈与を含みますが、財産を均等に分け与えることで惣領との主従関係を確立し一族全体の団結を図ったのです。
しかし代替わりが進むにつれ、財産(主に土地)ーが細分化されてしまい、武士は経済的に困窮していきます。しだいに武士の不満は募ってゆき、反幕府勢力と結びつくことによって、鎌倉幕府は衰退のみちをたどります。

例)配偶者、子3人の場合=争配偶者(1/4)、子A(1/4)、子B(1/4)、子c(1/4)

3.室町から戦国時代は「選ばれた後継者に単独相続」

鎌倉時代末期から室町時代にかけては、鎌倉時代に主流であった「分割相続」から[単独相続」へと相続法が変わっていきます。「単独相続」とは一族の惣領から後継者にすべての財産を相続させる分割方法をいいます。これは「分割相続」による財産の細分化により一族の勢力が弱体化したことを教訓としてうまれた分割方法といえます。
しかし、この時代の「単独相続」における[後継者」は一族のうち優れた者を選び、相続させる方法で、あったため、後継者争いが頻発し、やがて戦国時代を迎える要因のひとつとなりました。

例)配偶者、子3人の場合=今後継者の子A(1/1)、配偶者(0)、子B(0)、子C(O)

4.江戸時代は「長子に単独相続」

乱世を経て江戸時代になると、前時代の教訓から基本的には長子(長男)にすべての財産を相続させる「単独相続」の制度が確立します。これにより後継者争いは減少し、江戸時代は比較的安定した時代を迎えます。
長子相続の考え方は、その後の明治時代以降、第二次世界大戦後まで続くこととなります。

例)配偶者、子3人の場合=今長子A(1/1}、配偶者(0)、子B(0)、子c(0)

1-7 相続財産と納税方法

Q.相続財産の評価と納税の関係を教えてください。

(1)相続税の納税方法こは、現金納付・延納・物納があります。
(2)相続財産を換金して納税する場合には、譲渡税が発生するケースがあります。

(1)相続税の納付方法

相続税を納付する方法には、現金納付・延納・物納があります。現金納付による場合は、必要税額を一括して納付します。相続税額が少ない場合、または相続財産の中に現金・預金等が多額にある場合にはこの方法によります。
延納とは、現金納付が困難な場合に、税務署に担保を提供して、相続税を延べ払いする方法です。相続税が多額な場合、または相続財産の中に現金・預金等が少ない場合には、この方法によります。
物納とは、現金納付・延納が困難な場合に、相続税を現金等以外の相続財産により納付する方法です。一般的に物納対象となる資産は、相続した上場有価ー証券、土地ということになります。通常は、このような資産を売却して換金後納税することとなるわけですが、換金が困難な場合や、換金による税負担が大きい場合に物納によることになります。

(2)相続財産の売却(換金)と納税

相続税を納付するためには、相続財産を売却(換金)ーしなければなりません。現金預金については、そのまま納税できるので、問題はありませんが、土地については、売却した場合の譲渡税を考慮に入れなければなりません。

相続財産の税引き後の納税原資としての価値

相続財産の種類 相続税評価 換金時価 換金時の税金 納税原資
現金・預金 100 100 0 100
土地 100 125 23.75
(125-125X5%)X20%
101.25
115 21.85
(115-115X5%)X20%
93.15

注1 各相続財産の相続税評価額を100とした場合の、実際に売却する場合における価値を換金時価といいます。
注2 換金の場合に、売却益に課せられる税金を換金時の税金としています。
注3 長期譲渡(平成25年現在)の場合を前提とし、取得費は収入金額の5%として計算しております。
注4 取得費加算は考慮しておりません。

土地の場合には、被相続人がその土地を取得した日から売却時までの期間により、税金が異なります。譲渡した年の1月1日現在で5年以下の場合には短期、5年超の場合には長期として税金を計算することとなります。短期の場合には、譲渡利益の約39%が税金となります。また、長期の場合には、譲渡利益の約20%が税金となります。土地の場合には相続税評価と時価に差があり、相続税の財産評価上は、他の財産に比較して有利になりますが、換金時の時価と換金時にかかる譲渡税を考慮して納税資金を検討することが必要です。
01-07

1-6 相続税額の2割加算

Q.相続税額の2割加算について教えてください。

基本的には配偶者及び1親等の血族加者の相続税額は2割増となります。

(1) 2割加算制度の概要

相続税額の2割加算制度とは、1親等の血族(代襲相続人を含む)及び配偶者以外の者が相続又は遺贈により財産を取得した場合、相続税額が2割増しになるというものです。これは孫に財産が遺贈されることによって、相続税の課税の機会が1回減少することから、このような財産の取得に対して相続税をある程度重課するためのものです。
01-06

(2)孫養子の2割加算

従来は、被相続人と養子縁組した孫(=孫養子)については2割加算の対象外とされていました。たとえば、(図2)孫Dは、本来被相続人からみて2親等の親族となるため加算の対象となりますが、孫養子となった場合には、1親等の法定血族としてその対象から外されていました。しかし、平成15年度改正により、規制が加えられて、孫養子についても2割加算の対象者とされました。即ち、孫Dは養子縁組をしても2割増しで支払うことになります。
ただし、孫養子が代襲相続人の場合には、2割加算の対象にはなりません。孫Cは、実子Aの死亡により、その法定相続人としての権利を受け継いだ代襲相続人となります。この場合、1親等と同じ取り扱いで2割加算されません。
なお、婿養子・嫁養子についても、2割加算の対象外です。

(3)相続時精算課税制度と2割加算

相続開始の時において被相続人の一親等の血族に該当しない相続時精算課税
適用者は、その相続税額のうちその被相続人の一親等の血族であった期間内に被相続人からの贈与により取得した相続時精算課税適用財産に対応する相続税額については、相続税額の加算の対象とならないこととされています。
例えば、養子に対して相続時精算課税贈与を行った後に養子縁組を解消した場合においては、この元養子は、特定贈与者からの贈与により取得した財産について同制度に基づく相続税の申告を行わなければなりません。この場合、養子縁組期間中以外にも取得した財産がある場合には、2割加算の対象とならない部分の金額を計算しなければなりません。

≪1≫2割加算の趣旨
孫が財産をもらうと相続税を1回分免れることができ、また相続人以外の人が財産をもらうのは偶然性が高いといえることから、相続税の負担調整を図る目的で加算を行うとされています。

≪2≫2割加算の対象者
次の1~2以外の者が対象となります。
1.一親等の血族(父、母、子)
2.配偶者

1-5 小規模宅地の減額(2) 特定事業用

Q.医院の敷地になっている土地を相続した場合、どうなりますか?

小規模宅地等の特例により、土地の評価額を400平方メートルまで、80%減額できます。

(1)小規模宅地等の概要

開業医の方などが事業を行うのに最低限必要な土地について、相続税の負担を軽くするための制度です。
個人で開業されている場合には特定事業用宅地等として、持分の定めのある医療法人を設立されている場合には特定同族会社事業用宅地等として、医院の敷地であればそれぞれ適用があります。
この特例は面積は400ばまでという制限はありますが、土地の値段による制限はありませんので、土地をいくつか持っているような場合には、値段の高いものから400ばまで選択できます。

(2)適用要件

この特例を受けるためには、相続した土地が医院の敷地であるほか、次の要件に該当することが必要です。
≪1≫個人開業医の医院の敷地の場合

イ.事業を承継した親族が取得した土地であること
ロ.土地を取得した事業承継親族が医院の経営を申告期限まで続けていること
ハ.土地を取得した事業承継親族がその土地を申告期限まで所有していること

≪2≫持分の定めのある医療法人の医院の敷地の場合

イ.相続開始の直前に被相続人とその同族関係者が医療法人の出資の50%超を持っていること
ロ.申告期限において役員である親族が取得した土地であること
ハ.医院の経営を相続税の申告期限まで続けていること
ニ.ロの取得者がその土地を申告期限まで所有していること

(※)ー申告期限は死亡した日から10ヶ月です

(3)留意点

医院の敷地部分とマンションの敷地部分がある場合アパートやマンションの一部屋を病院にしていて他は貸し付けているような場合は、病院部分だけが80%の減額となります。(賃貸部分は200平方メートルまで50%の減額です。限度面積については、一定の調整計算があります。)

01-05-01

(4)特定事業用宅地等と特定居住用宅地との併用

税制改正により、平成27年1月1日以後の相続については、事業用と居住用の土地について小規模宅地等の評価減が併用できることになり、特例の適用面積が広がります。

 

≪1≫平成26年12月31日まで(改正前)
一定の調整計算により400平方メートルまでが80%の減額となります。

≪2≫平成27年1月1日以後(改正後)
特定事業用宅地等の限度面積400平方メートルと特定居住用宅地の限度面積330平方メートルの合計面積730ばまでが80%の減額となります。

01-05-02

1-4 小規模宅地の減額(1) 特定居住用

Q.夫が亡くなって妻である私と子供たちが住んでいる家と土地を相続した場合、どうなりますか。

小規模宅地等の特例により土地の評価が叩額できます。

(1)小規模宅地等の特例の概要

相続や遺贈により被相続人の居住の用として使っていた土地を相続した場合、これらの土地は生活に最低限必要なものであるため、相続税の課税上、評価額を80%減額できる(240ばまで。平成27年1月1日以後の相続においては330平方メートル)という制度があります。

(2)特定居住用宅地とは?

実際には適用要件が細かく規定されていますが、一般的によくあるケスを簡単に取り上げてみます。たとえば、父が新宿と渋谷に土地を持っていて、新宿には父母と長男が住んでいて、渋谷には長女が父親の土地を借りてその上に自分の家を建てて住んでいる場合です。それぞれの要件に該当する場合に「特定居住用宅地等Jとして、80%減額することができます。
01-04-01

≪1≫新宿の土地について
イ 配偶者が相続した場合・・・無条件で該当します。
ロ 同居親族である長男が相続した場合・・・下記要件が必要

*父親の死後も、その土地を申告期限(※)ーまで所有し、かつそこに住んでいること
*同居親族であること
(※)ー申告期限は死亡した日から10ヶ月です。

≪2≫渋谷の土地について
イ 配偶者が相続した場合ー無条件で該当します。
ロ 同一生計の長女が相続した場合ー下記要件が必要

*父親の死後も、その土地を申告期限(※)ーまで所有し、かつそこに住んでいること
*同一生計親族であること
*父親から借りていた土地の借受形態は使用貸借であること
例えば、3階建てのマンションで、1階・2階が賃貸用、3階が被相続人等の居住用であった場合には、居住用の3階部分に対応する土地については80%の減額、1階、2階部分に対応する土地については50%の評価減が適用されます。

01-04-02

(3)評価減特例の見直し

平成27年1月1日以後の相続について基礎控除が引き下げられることを勘案して、小規模宅地等の評価減の特例が拡充されます。
01-04-03

〈具体例〉
宅地の面積:330ぱ宅地の評価額:2億625万円
父所有の土地で生前父の居住用に利用していた
同居していた長男が取得し継続して居住用に利用した

・平成26年12月31日までの相続

評価額ー2億625万円ー(2億625万円×240平方メートル/330平方メートル×80%)
=8,625万円(▲1億2,000万円)

・平成27年1月1日以後の相続

評価額ー2億625万円-(2億625万円×330平方メートル/330平方メートル×80%)
=4,125万円(▲1億6,500万円)

1-3 土地の評価と路線価

Q.土地の相続税評価は、どのように計算するのでしょうか。

(1)土地の相続税評価は、路線価方式または倍率方式によります。
(2)路線価は、公示価格の80%程度に設定されています。

(1)路線価

路線価というのは、相続税における土地の評価基準です。
東京商工会議所ビル前(千代田区丸の内3-2-2)を例にとり説明しましょう。この場所は、14,580千円となっています。これは、1ぱ当り14,580千円ということで、Aは借地権割合90%であることをあらわしています。
このように、路線価というのは、各地域についてば当りの金額を千円単位で表示しています。この路線価に面積を乗ずることによって、土地の更地評価金額が算出されます。実際の相続では、土地の利用形態により評価減が適用され、その金額が相続税評価となります。

(2)公示価格と路線価

公示価格は国土交通省が公表している土地の取引についての基準価格です。
(基準日1月1日)
路線価は、この公示価格に対して約80%になるように設定されています。しかし、設例の地点で考えますと、千代田区丸の内近辺においては、平成23年、平成24年とも約75%になるように設定されていることがわかります。

(3)倍率方式

都市部や住宅密集地から離れた郊外の地域については、路線価が設定されていないことがあります。このような地域については、土地の固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて土地の更地評価金額が算出されます。

01-03

東京商工会議所ビル前の公示価格・路線価の推移

公示価格(1) 路線価(2) (2)/(1)
平成23 19,800千円 14,800千円 74.70%
平成24 19,500千円 14,580干円 74.70%

1-2 相続税はどのくらいかかるか

Q.相続税は実際の財産額に対してどの程度課せられるのでしょうか。

A.(1)相続税の金額は、相続財産と相続人の状況により異なります。
(2)配偶者がいる場合には、税額軽減が図られています。

(1)相続税の計算方法

相続税の金額を計算するためには、課税価格の決定と法定相続人の確定が必要になります。また、相続税を考える場合には、相続財産が配偶者と子供に相続され(1次相続)、のちに配偶者が相続した財産が子供に相続(2次相続)されるまでを、考えておかなければなりません。
1次相続の場合には、配偶者は相続する財産が全相続財産の法定相続分(1億6千万円未満のときは1億6千万円)までであれば、その部分に対応する相続税は軽減されますので、実際に発生する相続税は子供が相続する財産に
対応する部分になります。2次相続の場合には、配偶者の税額軽減が適用されませんから、結果的に支払税額が多額になります。

(2)相続税早見表

概算で相続税額を試算する場合には、相続税早見表(P.114,115)を参考にしてください。仮に相続財産が10億円で、配偶者と子供2人の場合の相続税を試算してみましょう。1次相続の場合の相続税が1億6,650万円※1、2次相続の場合は、配偶者が10億円の財産のうち5億円を引き継ぎ、その状況で相続が発生したとすると1億3,800万円純となります。10億円の財産が最終的にお子様に引き継がれるまでに合計3億450万円(1億6,650万円+1億3,800万円)料の相続税が必要となります。(もともと子供2人で配偶者がいない場合には、お子様に引き継がれるまでの相続税総額は3億7,100万円になります。)※4
※1平成27年1月1日以後1億7,810万円ー※2平成27年1月1日以後1憶5,210万円
畑平成27年1月1日以後3億3,020万円ー※4平成27年1月1日以後3億9,500万円

税制改正により基礎控除額が現行より40%引き下げられることになり、死亡者に対して相続税が課税される人の割合が、現状の約4.2%から約6%に増加すると見込まれます。

〈基礎控除額〉

平成26年12月31固までの相続「5000万円+1000万円×法定相続人数」→平成27年1月1日以後の相続 「3000万円+600万円×法定相続人数」

例:相続人3名の場合

01-02

基礎控除が大幅に減額するため相続税を諜鋭される人の割合が増加すると見込まれる。

1-1 相続税の概況

Q.相続税はどの程度の財産があると課税されるでしょうか。

A.(1)相続税は財産額が基礎控除額を上回った場合に課税されます。
(2)現行の基礎控除額は5,000万円+1,000万円×法定相続人数です。
(平成27年1月1日以後の相続については、3,000万円+600万円×法定相続人数)

(1)相続税課税状況の推移

相続税は、個人の財産を相続税の規定に従って評価し、その金額が基礎控除額を上回った場合に、発生します。
したがって、相続税が課せられるか否かは、第一に相続財産の状況、第二に基礎控除額に左右されます。
課税状況の推移を見てみましょう。
平成22年においては、年間約119万7千人の死亡者に対して、課税された人は約4万9千人となっており、死亡者に対して約4.2%となっています。
100人のうち4人に課せられる税金が相続税ということになりますが、実は、死亡者の約119万7千人には生まれてすぐにお亡くなりになった方から、男、女の区別なく全ての死亡者が入っています。

(2)基礎控除額の推移

相続税の課税状況は、基礎控除の金額にも左右されます。課税状況の推移を見ますと、平成3年をピークとして平成6年から減少傾向になっていますが、これは地価の下落のほか、平成6年に基礎控除額が引き上げられたことが影響しています。
基礎控除額は、相続税の対象となる財産評価金額から控除される金額であり、定額部分と法定相続人の人数による部分の合計金額になります。

課税状況の推移

区分 死亡者数・課税件数等 課税価格 相続税額
年分 死亡者数
(a)
課税件数
(b)
(b)/(a) 被相続人
1人当たり
法定相
続人数
合計額
(c)
被相続人
1人当たり
金額
納付税額
(d)
被相続人
1人当たり
金額
(d)/(c)
平成 % 億円 万円 億円 万円 %
3 829,797 56,554 6.8 3.81 178,417 31,548.00 39,651 7,011.20 22.2
4 856,643 54,449 6.4 3.85 188,201 34,564.70 34,099 6,262.50 18.1
5 878,532 52,877 6 3.81 167,545 31,685.90 27,768 5,251.50 16.6
6 875,933 45,335 5.2 3.79 145,454 32,084.40 21,058 4,644.90 14.5
7 922,139 50,729 5.5 3.72 152,998 30,159.90 21,730 4,283.50 14.2
8 896,211 48,476 5.4 3.71 140,774 29,039.90 19,376 3,997.00 13.8
9 913,402 48,605 5.3 3.68 138,635 28,522.80 19,339 3,978.80 13.9
10 936,484 49,526 5.3 3.61 132,468 26,747.10 16,826 3,397.40 12.7
11 982,031 50,731 5.2 3.59 132,699 26,157.30 16,876 3,326.50 12.7
12 961,653 48,463 5 3.55 123,409 25,464.70 15,213 3,139.00 12.3
13 970,331 46,012 4.7 3.52 117,035 25,435.70 14,771 3,210.20 12.6
14 982,379 44,370 4.5 3.46 106,397 23,979.40 12,863 2,899.00 12.1
15 1,014,951 44,438 4.4 3.4 103,582 23,309.40 11,263 2,534.60 10.9
16 1,028,602 43,488 4.2 3.35 98,618 22,677.00 10,651 2,449.10 10.8
17 1,083,796 45,152 4.2 3.33 101,953 22,579.90 11,567 2,561.80 11.3
18 1,084,450 45,177 4.2 3.26 104,056 23,032.90 12,234 2,708.10 11.8
19 1,108,334 46,820 4.2 3.2 106,557 22,758.90 12,666 2,705.30 11.9
20 1,142,407 48,016 4.2 3.17 107,482 22,384.70 12,517 2,606.80 11.6
21 1,141,865 46,439 4.1 3.13 101,230 21,798.60 11,632 2,504.70 11.5
22 1,197,012 49,891 4.2 3.08 104,630 20,971.70 11,753 2,355.70 11.2

出典:財務省ホームページ

現行においては、定額部分5,000万円、法定相続人による部分1人1,000万円ですから、相続人が配偶者と子供2人の場合には5,000万円+1,000万円×3=8,000万円となります。つまり、相続財産額を評価して、8,000万円に達するまでは相続税の課税はないということになります。
しかし、平成25年度税制改正により、平成27年1月1日以後の相続又は遺贈に係る相続税について、基礎控除額が「3,側万円十側万円×法定相続人数」に引き下げられることになっています。上記の現行の基礎控除額8,側万円が4,800万円になりますので、40%基礎控除額が引き下げられることになり、相続税の対象となる割合が現状の約4.2%から1.5倍の約6%まで増えると見込まれています。