3-3 医院の建設

現在更地の土地に医院を建てる場合、名義は誰にするのが有利ですか。

院長の名義で医院を建設すると、土地の相続税評価額を現在の5分の1にまで引き下げることができます。

(1)医院を建てると土地の評価額は大幅に下がる

医院を建設することによって、土地の評価額がどのように下がっていくかをまとめたのが右の表です。
現在院長が所有している土地は、更地のままで何も利用していない状態ですので、土地の評価額は「路線価×地積=150万円×400平方メートル=6億円」となり、相続税評価額としては、最も高い評価になっています。この場合、相続人を子供1人と仮定して、改正後の相続税を試算すると2億4,000万円もの相続税を納付しなければならないことになります。
そこで、この土地に、借入金2億円で院長名義の医院を建設し、医院として事業を開始した場合には、院長の土地は事業用の土地ということになり、相続でその土地を取得した親族が相続税の申告期限までにその事業を承継し、申告期限までその事業を営むことを条件に、「特定事業用の小規模宅地の評価減」の適用を受けることができます。(1-5参照)小規模宅地の評価減では、特定事業用の土地のうち400ばまでについては、更地評価額の80%の評価減が可能となりますので、土地の評価額は、更地の時の評価額の2割ですみます。
したがって、更地の評価額「6億円Jから小規模宅地の評価減「6億円×80%=4億8,000万円」を差し引いた1億2,000万円が、医院を建設した場合の評価額となります。この場合も同様に改正後の相続税を試算すると、納税額は40万円となり、医院を建設することによって、納めるべき相続税が2億3,960万円も少なくなるので、相続対策として大きな効果を得ることができます。

特定事業用小規模宅地の評価減による節税の一例

[前提条件]路線価150万円/平方メートル 地積400平方メートル

  現状(更地) 特定事業用宅地
更地の評価額小規 6億円 6億円
小規模宅地の評価減 ▲4億8,000万円
建物の評価額 1億2,000万円
借入金 ▲2億円
相続財産の合計 6億円 4,000万円
相続税額 2億4,000万円 40万円
節税効果 ▲2億3,960万円

(2)ご子息名義で医院を建築する場合

ご子息が医院を建築した場合にも、一定の場合には(1)と同様に80%の評価減を取ることができます。
例えば、院長の所有している土地に次期後継者を予定しているご子息が医院を建築して無償で貸して、院長の事業の用に供している場合においては、≪1≫相続でそのご子息が院長の事業を相続税の申告期限までに承継し、かつ営んでいること、≪2≫申告期限までに土地を保有していること、を要件に、更地評価額の80%の評価減が可能となります。
ただし、このような場合、ご子息に建設費が負担できるだけの経済力があることを証明し、資金の出所を明確にしておくことが重要となります。
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