医療法人における理事長退職金について教えてください。
(1)理事長退職金の支給について役員退職金規定の整備が必要です。
(2)退職金支払のための支払原資の確保が必要です。
(2)退職金支払のための支払原資の確保が必要です。
(1)理事長退職金支給金額の決定
個人事業の場合の事業主に対しての退職金は、所得税法上は認められていません。
医療法人の場合には理事長に対して支払う退職金について、その金額が適正額の範囲で認められています。
適正額の判断は、第一に医療法人の役員退職金規定、第二に対外的な基準によりなされます。
役員退職金規定については、過去の運用の経緯も考慮してあらかじめ作成、整備しておくことが重要です。
対外的な判断基準は、その支払った退職金が過大退職金として税務上認定されないかということがあります。
この場合には、役員退職金規定を整備した上で、次の算式により算定された金額を基準にされるとよいでしょう。
理事長退職金=適正月額報酬X勤続年数X功績倍率
(注) 功績倍率は3倍程度が基準です。
(2)支払原資の確保
理事長退職金は、一時に多額の支出を伴うものですから、その支払原資については、計画的に準備する必要があります。
生命保険の活用による節税プラン
<A生命保険会社の例>
・保険種類:長期平準定期保険
・45歳男性
・100歳満了
・死亡受取人:医療法人
・年払保険料:2,254,300円
・保険金額:1億円
・契約者:医療法人
・実効税率:35%
(単位:千円)
経過年数 | 年齢 | A | B | C | D | E | F | G |
支払保険料累計 | 損金計上額累計 | (B×0.35) 節税累計 |
(A-C) 実質累計 |
解約返戻金 | (E/A) 単純返戻率 |
(E/D) 実質返戻率 |
||
1年 | 46 | 2,462 | 1580 | 553 | 1,909 | 1580 | 64.10% | 77.70% |
5年 | 50 | 10,312 | 6.156 | 2.155 | 8,157 | 10,370 | 84.20% | 102.00% |
10年 | 55 | 24,624 | 12312 | 4,309 | 20,315 | 21,470 | 87.10% | 105.60% |
15年 | 60 | 36936 | 18468 | 6,464 | 30,472 | 32360 | 87.60% | 106.10% |
20年 | 65 | 49248 | 24624 | 8,618 | 40,630 | 43270 | 87.80% | 106.40% |
25年 | 70 | 61,560 | 30780 | 10,773 | 50,787 | 53,720 | 87.20% | 105.70% |
30年 | 75 | 73,872 | 36,936 | 12,928 | 60,944 | 63,460 | 85.90% | 104.10% |
35年 | 80 | 86,184 | 49248 | 17,237 | 68.947 | 72,190 | 83.70% | 104.70% |
43年 | 88 | 105883 | 83721 | 29.302 | 76,581 | 82,650 | 78.00% | 107.90% |
50年 | 95 | 123,120 | 113886 | 39,860 | 83,260 | 82,260 | 66.80% | 98.70% |
(平成25年6月現在,圏内生保)
※実質返戻率の最も高い43年目で解約した場合,下記のようになります。

43年で解約した場合、保険料累計は105,883千円となりますが、29,302千円の節税効果があるため、実際には76,581千円の負担で済み、実質負担を6,069千円上回る82,65ο千円の解約返戻金をうけることとなります。また、実質返戻率が100%を超えている期聞が長いので退職する時期に幅をもたすことができます。

43年で解約した場合、保険料累計は105,883千円となりますが、29,302千円の節税効果があるため、実際には76,581千円の負担で済み、実質負担を6,069千円上回る82,65ο千円の解約返戻金をうけることとなります。また、実質返戻率が100%を超えている期聞が長いので退職する時期に幅をもたすことができます。
その原資については、医療法人の利益蓄積から支払う場合や、不動産処分により支払う場合等がありますが、現状の医療法人の運営に影響を与えないためには、法人契約による生命保険の活用等により、支払原資を確保しておくことが必要でしょう。