3-1 医療法人の相続

医療法人の相続について教えてください。

(1)医療法人の所有する土地・建物・医療設備等は、法入所有財産です。
(2)相続の対象となるのは、医療法人の出資持分になります。(平成19年4月以降設立法人は基金となります。)

(1)個人事業の場合の医療相続

個人で、診療所・病院を開設されている場合には、医療財産も、その他個人財産も、相続税の課税対象となります。
したがって、医療財産については、医業を後継する相続人が引継ぎ、その他個人財産については通常の相続によるということになります。
この場合に、納税のために医療財産の一部(診療所の土地・建物等)を売却しなければならないような場合には、後継者の方が医療を継続する場合の障害となります。

(2)医療法人の場合の医療相続

医療法人で診療所・病院を開設されている場合には、医療財産は法人所有ですから、相続の対象となるのは持分の定めのある医療法人の出資持分とその他個人財産ということになります。
≪1≫持分の定めのある医療法人
一般の会社の株式に相当するものですから、その全額が相続の対象となるのではなく、被相続人の持分だけです。医療法人の出資持分について、相続税の規定により評価し、持分割合を乗じた金額が相続税の対象となります。一般的には、設立後の年数が長期となっており、医療法人の所有する土地等の含み益が多額な場合や、利益の蓄積が多額な場合には、出資持分の評価が高額になるので注意が必要です。また、将来の相続を考えた場合には、医療法人の出資持分について、早期に後継者に移転するなどの検討が必要でしょう。
≪2≫持分の定めのない医療法人(基金拠出型法人)
基金の所有者に相続が起こった場合の具体的な評価の方法は示されていません。しかし、基金は財産の種類としては債権ですから、基金は元本の価額で評価します。
なお、持分の定めのある医療法人から基金拠出型法人への移行に際しては、個人に対してはみなし配当課税が、医療法人に対しては贈与税又は相続税が課税される場合があります。

持分の定めのある医療法人については毎年蓄積される利益が出資持分に反映され、相続税の課税対象が大きくなることが多いことから、将来の相続を見据え、長期的な対策が必要となります。

[対策]
→出資持分の評価の引下げを図る
→早期に後継者に出資持分の移転を図る
→納税資金の確保を図る