4-6 医療法人運営上のメリット(1) 役員報酬

医療法人の役員報酬の設定の方法について教えてください。

(1)同収入でも医療法人の理事長報酬の場合には、給与所得控除の適用があります。
(2)適正理事長報酬の決定が重要です。

(1)理事長報酬と給与所得控除

個人事業の場合には、課税所得がそのまま個人所得税の対象となりますが、医療法人の場合には、一定の給与所得控除後の金額が課税所得となります。
たとえば、所得1,000万円の場合には、個人課税の場合に276万円の所得税、住民税となります。一方、医療法人で所得1000万円となり、その全額を理事長報酬として支払った場合には、1000万円の給与として取扱われますから、その給与から一定の給与所得控除を差し引いた金額が、個人の課税所得となります。この場合には、194万円の所得税・住民税となり、個人事業と比較して約30%程度課税所得が圧縮されることとなります。
このように、医療法人を設立し、所得を理事長報酬に転換することによって、実質手取りを増加させることができます。

(2)適正理事長報酬の決定

適正理事長報酬の決定については、第一に相対的適正金額の決定、第二に個人・医療法人比較による適正金額の決定があります。
相対的適正金額の決定は、同規模の医療法人等に比較して、理事長報酬が適正かという問題です。しかしながら、他の医療法人の理事長給与の資料を、入手することは容易ではありません。したがって実際には、各医療法人が利益をにらみながら理事長報酬を決定することになります。

個人事業と理事長給与(役員報酬)との税額の差

(単位:万円)

所得区分 (1)個人所得税・住民税合計 (2)理事長給与税金 (①・②)金額(減税額)
600 137 85 △52(38%)
800 200 137 △63(31%)
1,000 276 194 △82(29%)
1,200 362 263 △99(27%)
1,400 448 345 △103(23%)
1,600 534 429 △105(20%)
1,800 620 515 △105(17%)
2,000 720 601 △119(17%)
2,200 820 697 △123(15%)
2,400 920 797 △123(13%)

(注1)所得控除は考慮していません。単純に所得区分における所得税・住民税を表示しています。
(注2)(1)は所得区分の数字を事業所得とし、(2)は給与収入として計算しています。

なぜならば、医療法人が設立後に設備投資や借入金返済を行うためには、その原資となる利益を蓄積する必要があるからです。
また、医療法人利益を全額理事長報酬とすることは、給与所得控除によるメリットはありますが、医療法人化による法人税課税の優位性を失うことになりますから、この点からも医療法人利益と理事長報酬の適切な配分が必要となります。