コラム2

そもそも「贈与」とは何だろう?

1.「贈与」を正しく理解しよう

そもそも贈与とはどのようなことをいうのでしょうか。無償で財産を渡す、当たり前のことかもしれません。しかし贈与を正しく理解していないと思わぬところで税務当局から「実は贈与は成立していなかった」と指摘されるケスもあります。たとえば「名義預金」はその代表例といえます。子供名義の口座にお金を移したものの、子供はそのことをまったく知らず、口座自体も親が管理してい
るような場合には、たとえ親の意思で子供にお金をあげたという認識でいてもそのお金は実質的に親のものとされてしまいます。これでは相続対策をしたつもりがまったく効果がなかったことになってしまいます。

2.「贈与」は民法で定められている

「贈与」は民法549条で次のように定められています。
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」
条文によると、当事者の双方が意思を表示し意思が合致することにより贈与が成立するとあるため、書面によって贈与契約を締結した場合には契約時に贈与が成立することになります。また、贈与は必ず’しも書面が必要というわけではなく口頭でも成立しますが、書面によらない贈与の場合には現実に財産を引き渡した等のタイミングで贈与が成立することになります。

3.税務当局に否認されないI贈与」とは

税務当局に否認されない贈与の成立は次の3つのポイントが重要となります。

(1)「あげた」という贈与側の意思表示があること。
(2)「もらった」という受贈側の受諾認識があること。
(3)もらった人がその財産を自ら利用、運用、管理している実績があること。

以上の3点については後目立証できることが重要となります。たとえば立証できる形跡として次のようなことがポイントになります。

・頚貯金等

→口座開設書類等には名義人本人が自署しているか。名義人本人が住所・氏名変更手続きや自ら出金した実績があるか。預金通帳・印鑑を名義人本人が保管しているか。

・上場株、投資信託等

→買付・売付の実際の指図人は誰か。配当金の実際の受取人は誰か。

・全財産共通

→贈与契約書を作成し自署押印しているか。贈与税の申告をし、自ら贈与税を納付しているか。

2-7 民法との接点

相続時精算課税制度が民法に与える影響として、具体的にはどのようなことが考えられますか?

財産の評価時期及び評価額に影響します。
(1)相続時精算課税は贈与時の評価
(2)民法の特別受益と遺留分の対象となる財産は相続開始時の評価

(1)民法上の特別受益

相続人の相続分につきましては、被相続人のその相続開始時の財産をベスに各相続分を算定することが原則です。しかし、もし相続人の中に、生前に被相続人から多額の贈与を受けていた人がいる場合に、その生前贈与分を相続財産に加算して相続財産の分割をしませんと公平で、はないことになります。

(2)民法上の遺留分

自己の財産は、生前も死後も自由に処分することができます。しかし、たとえば被相続人が遺言等で自分の財産を全て全くの第三者に遺贈した場合には、その相続人はその後の生活に困ってしまいます。
そこで、相続人の最低限度の生活保障と言う観点から、本来相続できる相続分の一定額までは遺留分として、その相続人が取得する権利があります。
その遺留分は右記の通りです。
その具体的な権利を遺留分減殺請求権といい、遺留分権利者が相続の開始や減殺すべき贈与または遺贈があったことを知った日から1年以内にこの請求をしませんと時効により消滅します。

(3)評価における注意点

民法上の特別受益と遺留分の財産の評価時期は、実務的には相続開始時となりますが、相続時精算課税制度による贈与を受けた場合には、その贈与時となります。従って、民法と相続税法ではその評価時期が違うので、贈与時と相続時の時価に大きく差がある場合には、その調整が難しくなる場合があります。

遺留分の割合
民法では、相続人に相続分という基本的な財産の分配割合を決めています。配偶者以外の相続人(子供や父母・兄弟姉妹)が2人以上いる場合には、配偶者以外の人数で相続分を割ることになります。
そして、遺留分についても決まっています。基本的には、相続分の割合の2分の1が遺留分の割合になります。
(例外もあります。)

相続人 配偶者のみ 配偶者と子供 配偶者と父母 配偶者と兄弟姉妹 父母のみ
配偶者 子供 配偶者 車見 配偶者 兄弟姉妹
相続分 1 1/2 1/2 2/3 1/3 3/4 1/4 1
遺留分 1/2 1/4 1/4 1/3 1/6 1/2 1/3

たとえば、平成25年の贈与時のその財産の評価額は1億円であったが、平成34年の相続開始時は2億円となっていたケースや、その逆に贈与時は2億円であったが、相続時は1億円となっていたケースが考えられます。
ですから、この相続時精算課税制度を活用する場合には、必ず民法上の特別受益と遺留分を考慮にいれて検討する必要があります。

区分 項目 評価基準等
相続 相続時精算課税制度による贈与 贈与時の税法評価額
民法 特別受益・遺留分 相続開始時の時価相当

2-6 時価の影響

相続時間税制聞い生棚与した後にその財産が値上がり、または値下がりした場合にはどのようになりますか?教えてください。

下記のように、値上がりした場合には得をしますが、値下がりした場合には損をするケースもあります。従って、川今後はこの制度を活用するかどうかを充分に検討する必!要があります。

(1)生前贈与した財産が値上がりして得をしたケース

相続人子供2人で相続財産が5億円であることを前提にお話をすすめます。この場合、5億円に対する現状の相続税は1億3,800万円となります。この5億円のうち2億円部分を相続時精算課税制度により生前贈与する場合の贈与税は、3,500万円となります。この2億円の財産が将来1億円値上がりして3億円になっていたらどうなるのでしょうか?(この財産以外は価格変動がないものとします)。
もしこの財産を生前贈与していなければ、5億円の財産が6億円となりますので、その相続税は1億3,800万円ではなく、1億7,800万円を支払わなければなりませんでした。生前贈与してその値上がりした部分は子供に移転しますので、結果としてこの被相続人の相続財産は5億円に固定化されて、4,000万円の得をしたことになります。

(2)生前贈与した財産が値下がりして損をしたケース

この場合には、逆に生前贈与したことによりに損をすることになります。つまり、現状では5億円の相続財産に1億3,800万円の相続税がかかりますが、その何年か後には1億円値下がりしますので、相続財産は4億円となります。この場合の相続税は9,800万円でありますので、先に生前贈与いたしますと本来9,800万円でよかった相続税が、結果として1億3,800万円となり、4,000万円も多く相続税を支払うことになります。

(3)結論

従って、今後株式公開をするため値上がりが予定されている株式等のような成長財産はこの制度で早めに贈与するのが賢明ですが、値下がりが予想される財産は充分な検討が必要です。たとえば、値下がりが予想されても、毎年大きな賃貸収益を産むような高収益物件は早めに贈与しておいた方がいい場合もあります。

値上がり・値下がりで有利・不利となる例

く相続財産5億円,子供2人〉
1.相続時精算課税制度で生前贈与した財産が値上がりしたケース

(1)現状の相続税
5億円→1億3,800万円・・・(A)
(2)生前に2億円を贈与する
贈与税:(2億円‐2,500万円)×20%=3,500万円→相続税額から控除
(3)贈与財産が1億円値上がり3億円に!
(4)相続時の相続財産の評価額は?
3億円+2億円(贈与財産)=5億円
相続税:1憶3,800万円ム3500万円(生前贈与分)=1憶300万円
(5)納税額合計:(2)+(4)=1億3,800万円
(6)生前贈与しなかったら?相続財産の評価額=6億円
相続税:1億7,800万円・・・(B)
(7)(A)‐(B)=▲4,000万円 メリット

2.相続時精算課税制度で生前贈与した財産が値下がりしたケース
(1)現状の相続税
5億円→1億3,800万円・・・(A)
(2)生前に2億円を贈与する
贈与税:(2億円-2,500万円)×20%=3,500万円→相続税額から控除
(3)贈与財産が1億円値下がり1億円に!
(4)相続時の相続財産の評価額は?
3億円+2億円(贈与財産)=5億円
相続税:1億3,800万円 ▲3,500万円(生前贈与分)=1億300万円
(5)納税額合計:(2)+(4)=1憶3,800万円
(6)生前贈与しなかったら?
相続財産の評価額=4億円
相続税:9,800万円・・・(B)
(7)(A)‐(B)=▲4,000万円 デメリット

2-5 活用方法

「相続時精算課税制度」は具体的にどのように活用することができるのでしょうか。

相続時精算課税制度の活用事例として、次のようなものが考えられます。
(1)お子さまの住宅ローンを肩代わりする場合
(2)賃貸物件をお子さまに移転する場合
(3)事業承継を行う場合
(4)ぺイオフ対策を実施する場合

(1)お子さまの住宅ローンを肩代わりする場合

相続時精算課税制度を選択した場合には、肩代わりしたローン金額のうち2,500万円までが非課税となり、それを超える部分の金額については20%の贈与税が課せられます。一方、現行の贈与税暦年課税制度のもとで贈与税の負担なしにお子さまのローンを肩代わりしようとした場合には、110万円の非課税枠を利用して複数年に渡って贈与をすることになります。従って、相続時精算課税制度を選択した場合には、複数年贈与の手聞が省かれるだけでなく、一括返済することによりそれ以後の利息の負担がなくなるメリットがあります。
なお、相続時精算課税制度を選択した場合には肩代わりしたローン金額の全額が相続財産に合計されますので、実際にどちらが有利であるかは相続税額の負担額も含めて検討する必要があります。

(2)賃貸物件をお子さまに移転する場合

多額の賃貸収入がある場合に、相続時精算課税制度を選択して賃貸物件をお子さまに移転することにより、現行の贈与税暦年課税制度の場合と比較して低い贈与税額の負担で賃貸物件を移転することができます。
この贈与により、賃貸物件だけでなく賃貸収入もお子さまに移転しますので、所得が親子で分散され所得税の軽減が図られるとともに、お子さまが所得を蓄財することで相続税の支払い原資を確保することができます。

例:年間の不動産所得が1,750万円と850万円である2物件を所有しており、そのうちの1物件をお子様に贈与した場合
02-05

(3)事業承継を行う場合(持分の定めのある医療法人の場合)

相続時精算課税制度を選択し、事業を承継させたいお子さま以外のお子さまには金銭等を贈与して遺留分を放棄させ、かつ、遺言書を作成します。また、同じく相続時精算課税制度を利用して、事業を承継させたいお子さまには出資持分を贈与します。
このように、相続時精算課税制度を選択した贈与により、理事長・院長の意思のもとに生前に後継者を確定し事業承継を完了させ、相続発生後の事業承継トラブルを回避することができます。

(4)ぺイオフ対策を実施する場合

相続時精算課税制度を選択した場合には、お子さま1人につき1回の贈与で1,000万円を分散させることができます。1000万円ずつの分散ですので、贈与税は非課税となります。

2-4 住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例

「住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例」について、内容を教えてください。

(1)住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例の適用対象者は、贈与者は毅(年齢制限なし)、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属であれば対象となります。年齢の判定は、その年の1月1日現在で判定します。
(2)住宅取得等資金の贈与税の非課税制度を併用した場合、特別控除額の2,500万円に加え、非課税となる金額が平成!25年は一般住宅の場合700万円、良質な住宅用家屋の場合1,200万円あります。
(3)住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例は、平成24年1月1日から平成26年12月31日までの間に贈与により取得した住宅取得等資金について適用されます。

(1)贈与財産が住宅取得等資金である場合

贈与者である親の年齢に関らず相続時精算課税制度を選択することができます。また、住宅取得等資金の非課税制度を併用した場合の非課税枠は次のとおりとなります。

平成25年 平成26年
良質な住宅用家屋の場合 1,200万円 1,000万円
(東日本大震災の被災者の場合) (1,500万円) (1,500万円)
一般住宅(上記以外)ーの場合 700万円 500万円
(東日本大震災の被災者の場合) (1,000万円) (1,000万円)

(2)ー適用対象者

住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例の適用対象者は、贈与者は親(年齢制限なし)、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属であるものが対象です。また、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度を併用する場合には、これに加え合計所得金額が2000万円以下であることが条件です。各年齢の判定は、その年の1月1日現在で判定します。

(3)適用要件

≪1≫受贈者が取得した住宅取得等資金を、取得した年の翌年3月15日までに、自己の居住の用に供する一定の家屋の取得文は自己の居住の用に供する家屋の一定の増改築の費用に充てること。
イ)取得の場合、床面積50ぱ以上240平方メートル※1以下で既存住宅の場合には耐火建築で築25年以内約、非耐火建築で築20年以内※3
ロ)増改築の場合、増改築後の床面積50平方メートル以上240平方メートル※1以下で工事費用が
100万円以上
※l非課税制度併用の場合
築25年超のものについては新耐震基準を満たすもの
制築20年超のものについては新耐震基準を満たすもの
≪2≫≪1≫により取得又は増改築等した家屋を、同日までに自己の居住の用に供すること、または同日後遅滞なく自己の居住の用に供すると見込まれること。

(4)適用手続

この規定の適用を受けようとする場合には、受贈者がその贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの聞に、税務署長に対して相続時精算課税選択の届出をし、かつ一定の書類を提出しなければなりません。

(5)税額の計算

贈与税の非課税枠を超える部分は、一律20%の税率で課税されます。

住宅取得等資金の相続時精算課税制度選択の特例と非課税制度(平成25年)

02-04

(1)暦年課税 (2)相続時精算課税制度 (3)相続時精算課税制度選択の特例 (4)住宅取得等資金の非課税制度
控除適用枠 基礎控除
110万円まで
特別控除2,500万円まで 非課税枠 1,200万円又は700万円(平成25年)
(平成26年は1,000万円又は500万円)
贈与者 制限なし
(年齢65歳以上)

(年齢制限なし)
親・祖父母などの直系尊属 (年齢制限なし)
受贈者 制限なし 贈与年1月1日時点で20歳以上の推定相続人である子
(子が亡くなっている場合は孫)
贈与年1月1日時点で20歳以上の子・孫等の直系卑属(合計所得金額2,000万円以下)
贈与財産 制限なし 制限なし 新築住宅、中古住宅の資金
-対象物件の床面積は50平方メートル以上(非課税制度の場合は50平方メートル以上240平方メートル以下のもの。上限240平方メートルは震災被災者は除く。)
-店舗併用住宅は1/2以上が住宅
-耐火建築物は築25年以内、それ以外は築20年以内増改築の資金
-対象物件の床面積は50平方メートル以上(非課税制度の場合は50平方メートル以上240平方メートル以下のもの。上限240rriは震災被災者は除く。)
-工事費用100万円以上
・店舗併用住宅は1/2以上が住宅
・居住用部分の工事費用が全体の1/2以上
税率 基礎控除枠超える
部分に対して
累進課税
(10%50%)
特別控除枠2,500万円を超える部分に対して一律20% 単独適用の場合は基礎控除+
非諜税枠を超える部分に対して累進課税
(1)と併用の場合は特別控除枠+非課税枠を超える部分に対して一律20%
贈与税の申告 税額が出る
場合は必要
税額が出なくても必要
併用関係 (4)との併用可 (4)との併用可 (1)、(3)と併用可

2-3 現行制度との比較

現行の贈与税暦年課税制度と相続時精算課税制度のメリット・デメリッ卜を教えてください。

(1)暦年課税制度
メリット:基礎控除の110万円を毎年活用でき、相続開始前3年超の贈与財産は相続財産に加算されない。
デメリット:贈与金額によって最高50%(平成27年1月1日以後の贈与については55%)ーの税率が適用される。(税率が高い。)
(2)相続時精算課税制度
メリット:生前贈与の非課税枠2,500万円を超えた部分も一律20%の税率で済むので、マンションなどの収益物件を贈与すれば早くに子に収益を移転出来る。また、相続時に合算される価額は贈与時の価額であるため、将来値上がりが確実な資産には有効。
デメリット:贈与財産は相続財産に合算される。暦年課税秘度に戻ることができない。

(1)適用対象者

≪1≫暦年課税制度は適用対象者の制限はありません。
≪2≫相続時精算課税制度の適用対象者は、贈与者は65歳以上(平成27年1月1日以後の贈与については60歳以上)の親、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属である子供(平成27年1月1日以後の贈与については「孫」を追加)です。なお、各年齢は、贈与のあった年の1月1日現在で判定します。

(2)届出

≪1≫暦年課税制度は届出の必要はありません。
≪2≫相続時精算課税制度は届出が必要です。受贈者である兄弟姉妹が別々に、贈与者である父母ごとに選択することが可能です。相続時精算課税制度を選択した場合、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。(一度相続時精算課税制度を選択してしまうと暦年課税制度を使うことができなくなってしまいます。)

(3)非課税枠

≪1≫暦年課税制度は毎年110万円の基礎控除があります。
≪2≫相続時精算課税制度は2,500万円の特別控除があります(2,500万円を限度に限度額まで複数回使用可)

(4)税率

≪1≫暦年課税制度は10%から50%(平成27年1月1日以後の贈与については55%)の超過累進税率で課税されます。
≪2≫相続時精算課税制度は2500万円を超えた部分に対して一律20%で課税されます。

(5)相続時の精算

≪1≫暦年課税制度の贈与財産は相続開始前3年以内のもののみが相続財産に加算されます。ただし、加算された贈与財産に係る贈与税は相続税から控除できます。(還付はありません。)
≪2≫相続時精算課税制度の贈与財産は全額相続財産に加算されます(相続税の課税対象になります)。ただし、すで、に支払った相続時精算課税制度に係る贈与税額は相続税額から控除できます。相続税額から控除しきれない贈与税額については還付を受けられます。
※相続財産に加算される価額は、≪1≫、≪2≫ともに贈与時の価額です。

贈与税暦年課税制度と相続時精算課税制度

→相続時精算課税制度を選択した場合には、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。

①暦年課税 ②相続時精算課税制度
控験適用枠 基礎控除
110万円まで(毎年適用できる)
特別控除2,500万円まで
(限度額に達するまで控除でき、限度額を超える部分については一律20%課税される)
贈与者 制限なし
(平成27年1月1日以後、祖父母、父母から20歳以上の子、孫に対しての贈与の場合には税率の優遇あり。)
親(年齢65歳以上、父母ごと、兄弟姉妹ごとに選択)
(平成27年1月1日以後贈与の場合は年齢60歳以上)
受贈者 制限なし
(平成27年1月1日以後、祖父母、父母から20歳以上の子、孫に対しての贈与の場合には税率の優遇あり。)
20歳以上の推定相続人である子
(平成27年1月1日以後贈与の場合は20歳以上の孫を追加)
贈与財産 制限なし 制限なし
税家 基礎控除額を超える部分に対して累進課税(10%50%)
(平成27年1月1日以後贈与については、10%55%)
特別控除枠2,500万円を超える部分に対して一律20%
贈与税の申告 税額が出る場合は必要 税額が出なくても必要
相続税との関係 贈与後3年経過すれば相続時に相続財産に含めなくてよい 相続時に、贈与財産を相続財産に持ち戻して相続税を計算する
(孫に対する贈与については相続時に2割増しで相続税を計算)

2-2 相続時精算課税制度の具体例

「相続時間税制度」を利用した場合贈与をした時・相続が起こった時には、具体的にどのように税金は計算されますか。

(1)贈与の時点では、「相続時精算課税寄せ度Jを選択してその贈与財産から非課税枠の2500万円を差し引いて、非課税枠を超える部分に20%で課税されます。
(2)棉続時には、「相続発生時の相続財産」および「剥度選択後の贈与財産」を合算したもので相続税を計算し、ここから贈与時に支払った贈与税を控除します。

計算の概要は上記のようになりますが、より具体的に見てみましょう。現在院長が財産を1億円持ち、相続人は妻と後継者の子供の2人とします。

(1)「相続時精算課税制度」を利用した贈与時

平成25年に院長は、財産のうち1,500万円分を子供に贈与することとしました。このとき相続時精算課税制度を選択し、申告した場合、非課税枠の2,500万円のうち1,500万円を控除します。すると平成25年の課税対象額はO円となり、贈与税額も0円となります。
さらに、平成26年にも3,000万円分を贈与することとしました。相続時精算課税制度は、一度選択すると相続が発生するまで当事者間の贈与全てに適用されます。ですから、平成26年の贈与もこの制度の枠内で行われることとなります。したがって平成26年の贈与税の計算は、贈与額3,000万円から非課税枠の残額1,000万円を控除した、2,000万円に対して税率20%で課税され、贈与税額は400万円となります。

(2)相続発生時

平成26年から4年後、平成30年に院長が亡くなり、相続が発生しました。相続時において院長が所有していた相続財産は贈与後の残額5,500万円です。しかし、相続時精算課税制度を選択していますので、制度選択後の贈与財産も相続財産として合算されます。つまり相続税課税対象額は、生前贈与分の4,500万円と院長所有の相続財産5,500万円、あわせて1億円ということになります。もし子が相続する財産が生前贈与分をあわせて5,000万円であるとすると、相続税額は385万円になります。しかし、生前贈与にかかわる贈与税額がすでに支払われていますので、これを相続税額から控除します。
支払った贈与税額は400万円ですので、相続税額385万円から400万円を引くとマイナス15万円、つまり15万円が還付されることとなります(この還付金には還付加算金もつきます)。

【図相続税精算課税制度の適用例】

02-02

2-1 相続時精算課税制度の概要

「相続時精算課税制度」について、内容を教えてください。

(1)平成15年度改正により贈与税暦年課税制度(相続と区分して毎年110万円の基礎控除)に加えて、相続時精算課税制度が選択制で創設されました。
(2)相続時精算課税制度の適用対象者は、贈与者は65歳以上の親(平成27年1月1日以後の贈与については60歳以上)、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属である子供(平成27年1月18以後の贈与については20歳以上の孫を追加)です。なお、年齢は、その年の1月1日現在で判定します。
(3)相続時精算課税制度は2,500万円までは贈与税非課税、超過部分は一律20%の税率で課税されます。

(1)相続時精算課税制度は選択制

相続時精算課税制度は、贈与税暦年課税制度(相続と区分して毎年110万円の基礎控除)との選択制です。
≪1≫受贈者である兄弟姉妹が別々に、贈与者である父母ごとに選択可能です。
≪2≫相続時精算課税制度を選択した場合、相続時まで相続時精算課税制度が継続して適用されます。つまり、一度選択したら取りやめはできません。

(2)適用対象者

≪1≫相続時精算課税制度の適用対象者は、贈与者は65歳以上(平成27年1月1日以後の贈与については60歳以上)ーの親、受贈者は20歳以上の贈与者の推定相続人で直系卑属である子供(平成27年1月1日以後の贈与については20歳以上の孫を追加)が対象です。各年齢は、その年の1月1日現在で判定します。
≪2≫人数の制限はありません。

(3)適用手続

相続時精算課税制度を選択する受贈者は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの聞に納税地の所轄税務署長に対してその旨の届出書を提出します。

(4)適用対象財産等

相続時精算課税制度の適用にあたって、贈与財産の種類、贈与金額、贈与回数の制限はありません。

(5)税額の計算等

≪1≫贈与税額の計算
2,500万円までは贈与税非課税、超過部分は一律20%の税率で課税されます。
≪2≫相続税額の計算等
贈与者の相続時に、相続時精算課税制度の適用以後の贈与により取得した財産の贈与時における価額と相続財産の価額を合計し相続税を計算し、すでに支払った相続時精算課税制度に係る贈与税額を控除して計算します。相続税額から控除しきれない贈与税額は還付を受けられます。ただし、平成27年1月1日以後の贈与について孫を対象として贈与した場合には、合計して計算する相続税額は2割増しで計算します。

相続時精算課税制度の対象の拡充

相続時精算課税制度:生前贈与の非課税枠2,500万円を超える部分に一律20%贈与税課税
贈与財産は相続時に贈与時の価額で相続財産に合算
02-01