コラム6

社会医療法人

社会医療法人制度は、救急・災害・へき地医療等など特に地域で必要な医療の提供を担う医療法人を新たに社会医療法人として認定し、これらの医療に社会医療法人を積極的に参加させることにより、良質で、かっ適切な医療を効率的に手帰郷する体制の確保を図るために設けられました。平成24年1月1日現在では全国に161の社会医療法人があります。
医療法人が、都道府県知事の認定を受け、社会医療法人となるためには、4つの要件があります。
≪1≫医療法人の役員のうち親族が3分の1を越えないこと。
≪2≫救急医療、へき地医療などを行っていること。
≪3≫法人の理事と監事の選任の定数、選任方法などの運営が厚生労働省令で定める要件に該当すること、社会診療報酬と助産にかかる収入が全収入の8割を超えることなどの法人の事業が厚生労働省令で定める要件に該当すること。
≪4≫解散時の残余財産が国等に帰属することです。
社会医療法人の認定を受けますと、医療法人はいくつかの特徴を持つことになります。社会医療法人等が開設する病院等の業務に支障のない限り、定款等に定めるところにより、厚生労働大臣が定める「収益業務jを行うことが、きます。社会医療法人の社会的信用を傷つけないことといった要件はありますが、不動産業・飲食店・教育学習支援業といった収益業務を行う事がで、きます。また社会医療法人は、法人税法上、公益法人等とされ、税制上の優遇措置が受けられます。社会医療法人の行う本来業務に法人税は課税されません。院内の自動販売機の設置、売店の運営、患者を対象とした日用品の販売といった付随業務と収益業務にのみ法人税が課税されます。社会医療法人は法人税の納税義務はほとんど生じないでしょう。また、社会医療法人は医療法人債という社債を発行することができますので、投資家から直接必要となる資金を調達することができます。

6-3 税テク運用

税金を活用した資産運用について教えてください。

不動産や金融資産の運用を考える場合、表面的な利回りだけでなく、税引後の手取客員としての実質的な利回りを検討して、運用対象を選択することが重要です。

(1)金融資産運用と税金

大部分の金融商品は、源泉分離課税といって、他の所得とは分離して課税計算されるしくみになっています。所得税の分類上は、利子所得となり、税金は運用益の20%で済みます(所得税15%、住民税5%)。総合課税の場合、所得税・住民税の合計で最高50%(平成27年以降は55%)の税率となっていますから、収入が多く、所得税・住民税の税率の高い方の場合には源泉分離課税の方が有利になります。
ただし、この場合、借入金で投資しても、投下資金に対する借入金利息については、税務上全く考慮されません。
なお、主な金融商品の課税方式と利回りについては、「6-1」を参照してください。

(2)上場株式の譲渡と税金

上場株式の譲渡益に対する課税は申告分離課税によります。
申告分離課税とは、株式等の譲渡益(株式等にかかる譲渡所得等の金額といいます)を他の所得とは分離して単独の課税がされる方式です。(原則確定申告が必要です。)
なお、特定口座制度により、源泉徴収を選択することにより、確定申告をせずに課税関係を完結させることもできます。
≪1≫譲渡益に対する税率
譲渡益に対する税率は原則20%ですが、平成25年12月31日までは譲渡益に対して10%(所得税7%・住民税3%)の優遇税率が適用されます。
譲渡益とは、譲渡(売却)代金から購入金額と借入金利子、委託手数料、管理費等の経費を差し引いた金額です。
≪2≫譲渡損失の繰越控除
上場株式等を証券会社を通じて売却したことにより生じた損失金額のうち、その年に控除しきれない金額については、翌年以後3年間にわたり、確定申告により株式等の譲渡所得の金額及び申告分離課税を選択した配当所得から繰越控除できます。

このように株式市場を活性化するため時限的措置として様々な優遇措置が定められましたが、取得価額の把握と売却のタイミングが重要となってきます。

6-2 不動産運用

不動産による運用益の取り扱いについて教えてください。

(1)不動産の賃貸による運用益は総合課税されます。
(2)不動産を賃貸することにより赤字が生じた場合には、他の所得との通算ができます。
(3)不動産の値上がりによる含み益については売却した場合に課税されます。

(1)不動産運用損益の取り扱い

個人の場合、不動産の賃貸による所得は不動産所得となり、本業所得とともに総合課税されることになります。したがって、本業所得が高額である場合には税負担が大きくなる場合があります。
また、不動産の賃貸による不動産所得が赤字の場合には、本業所得と通算して課税計算することにより、税額が圧縮される場合があります。ただし、不動産所得の赤字のうち、土地金利部分については、他の所得との通算が制限されますから、注意が必要です。
設例では、5年間の家賃収入2,500万円に対して、所得税等の節税額が、201万円、実収入が、1,527万円ということになります。
このように、所得税を圧縮しながら、賃貸不動産の運用ができます。

(2)不動産の売却損益の取扱い

個人が、賃貸用不動産を売却した場合の、売却益については、原則として他の所得と分離して税金が計算されます。
売却益については、その賃貸不動産の所有期間の長短により課税の方式が異なり、所有期間が5年を超えると、長期譲渡となり税額が軽減されています。

自己資金で賃貸アパートを建設した場合のタックスプラン

く前提条件〉
1.賃貸不動産購入価額:1億円(内土地価額4,000万円)
2.家賃収入:年500万円
3.資金調達:全額自己資金
4.建物の減価償却費 :本体(建物の80%/定額法22年償却)附属設備(建物の20%/定率法15年償却)
5.個人所得:3,000万円/年

(単位:万円)

初年度 2年目 3年目 4年目 5年目 5年間累計
<収入>
家賃収入 ①
500 500 500 500 500 2,500.0…A
<経費>
減価償却費
借入金利息
 
380.4
0
 
359.2
0
 
340.8
0
 
324.8
0
 
312.8
0
 
1,718.0
賃貸に係る
その他経費
454 180 180 180 180 1,174.0…C
経費計 ② 834.4 539.2 520.8 504.8 492.8 2,892.0
<所得>
不動産所得③
(①一②)
-334.4 39.2 -20.8 -4.8 7.2 -392
通算後所得
(3,000万円+③)
2,665.6 2,960.8 2.979.2 2,995.2 3,007.2 14,608.0
<税額>
当初所得(3,000万円)
の所得税
1,220.0 1,220.0 1,220.0 1,220.0 1,220.0 6,100.0
通算後所得の税額 1,053.2 1,200.8 1,210.0 1,218.0 1.224.0 5,906.0
節税額 166.8 19.2 10.0 2.0 -4.0 194.0…B

06-02

6-1 金融資産運用

金融資産運用についての考え方を教えてください。

(1)個人の場合の金融資産運用は、税引後資金の運用となります。
(2)金融資産運用益について、医業所得と総合課税されるか否かが重要です。

(1)金融資産運用は税引後資金により行われる

定期預金、投資信託等の金融資産運用については、個人事業主の場合には、家事費、家計費を運用していることになりますから、その運用のための借入金金利は事業上の必要経費にはなりません。
すなわち、税引後の資金により、運用益を得ることになります。この点が本業に資金投下して利益を得ることとの遠いです。
たとえば、本業に資金投下して10%の利益をあげる事業と、金融資産運用により10%あげる運用益とがあったとします。同じ利回りであっても、本業への資金投下については借入金利が必要経費となり、全体の課税所得を圧縮しているのに対して、金融資産運用の場合には、必要経費にならない場合もあるということです。

(2)総合課税と源泉分離課税

運用益についても、大部分の金融資産運用益が、本業所得とは分離して課税計算されるしくみになっています。総合課税と源泉分離課税とを比較すると、源泉分離課税は、通常20%の税率となっていますが、総合課税の税率は、課税所得に応じて変わりますので、運用益以外の所得が多く、総合課税の税率が高い人にとっては源泉分離課税が有利となります。
つまり、表面利回りは低くても、源泉分離課税の金融商品であれば、運用者の所得規模によっては、有利に運用できます。

(3)配当課税

≪1≫源泉徴収のみで申告不要
≪2≫20%(所得税15%、住民税5%)の申告分離課税
(H25.12までは、上場株式については10%(所得税7%、住民税3%)となります。)
≪3≫総合課税で配当控除の適用
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(4)金融資産に関するその他の課税関係

商品名 収入 所得区分 課税方法 申告
預貯金(国内口座) 利子 利子所得 源泉分離課税 不要
預貯金(海外口座) 利子 利子所得 総合課税
  外貨預金 利子 利子所得 源泉分離課税 不要
為替差益 雑所得 為替予約有→源泉分離課税 不要
為替差益 雑所得 為替予約無→総合課税
MMF 分配金 利子所得 源泉分離課税 不要
売却益 譲渡所得 非課税
利付債 利子 利子所得 源泉分離課税 不要
売却益 譲渡所得 非課税(平成27年12月31日まで)
償還益 譲渡所得 申告分離課税(平成28年1月1日以降)
雑所得 総合課税(平成27年12月31日まで)
譲渡所得 申告分離課税(平成28年1月1日以降)
割引債 償還益 雑所得 18%の源泉徴収(発行時、平成27年12月31日まで) 不要
譲渡益 譲渡所得 申告分離課税(平成28年1月1日以降)
譲渡所得 非課税(平成27年12月31日まで)
譲渡所得 申告分離課税(平成28年l月1日以降)
金(地金) 売却益 雑所得又は譲渡所得 総合課税
金(金貯蓄) 売却益 譲渡所得 源泉分離課税 不要
金(純金積立) 売却益 雑所得又は譲渡所得 総合課税
一時払養老保険 差益又は譲渡所得 一時所得 5年以下源泉分離 不要
5年超→総合課税

注1)源泉分離課税の税率は20%。内訳は国税15%、地方税5%。
注2)申告分離課税の税率は20%。内訳は国税15%、地方税5%。
注3)非課税所得については、損失の場合でも控除できません。
注4)地金・純金積立で雑所得となるのは、営利目的、継続的売買とされる場合、該当しない場合は譲渡所得。